Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
材料はブタ膀胱ならびにヒト膀胱癌細胞株(HT-1197、high grade)を使用した。まず、ブタ膀胱の移行上皮細胞および線維芽細胞を単離採取した。得られた線維芽細胞をコラーゲンに混入し細胞皿上で固定化させて、これをin vitro上での粘膜下層にみたて、この上に移行上皮細胞を注ぎ培養した。これを膀胱粘膜モデルとし、培養5〜10日目に膀胱癌細胞株を注いで膀胱粘膜に播種浸潤するのかを検討した(A)。また、経尿道的電気切除に模倣して膀胱粘膜を針で傷つけたモデルにも同様に癌細胞株を注いだ(B)。さらに0.4N HClに1分間曝すことで、covering cellのみ化学的に損傷し、癌細胞株を注いだ(C)。培養体は、位相差顕徴鏡で経時的に観察すると共に、ホルマリン固定パラフィン切片を組織学的に検討した。腫瘍細胞は正常粘膜には生着しなかったが(A)、粘膜を機械的に傷つけた場合は、生着した(B)。また、粘膜表層のcovering cell損傷群では、正常上皮細胞の上に生着し増殖していたが、浸潤はみられなかった(C)。膀胱腫瘍の膀胱内再発の機序として、播種の存在もその一つといわれているが、今回の膀胱粘膜モデルによる検討でもその可能性が示唆された。また、正常粘膜には腫瘍細胞播種防御機構があり、膀胱粘膜のcovering cellが重要な役割を担っていることが示唆された。