Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
[緒言]多種多様の皮弁が開発された近年において、いかにしてより薄く、かつ大きなサイズの皮弁移植を可能にするかが、重要なテーマのひとつになっている。われわれは、真皮下血管網皮弁における血行再開は従来の厚い皮弁と比べて早期に起こることをmicroangiographyを用いて2次元的に証明したが、その発生のメカニズム、由来、成長過程についてはまだ不明な点が多い。そこで、ラット真皮下血管網皮弁モデルを用いて、さらに3次元的にその構造について検討を加えることを考え、実験を計画実施した。[材料と方法]体重300-350グラムのオスのウィスター系ラットの両鼡径部に皮弁を作成し、一側を真皮下血管網を温存しつつthinningし、真皮下血管網皮弁とした。他側はthinningせずに対照皮弁とした。皮弁挙上後、1、2、2.5、3、5、7日目の各皮弁の血管鋳型標本を作成し、走査電子顕微鏡下に観察を行った。[結果]真皮下血管網皮弁では、皮弁作成後1日目の母床では、上方に向かって曲がりくねり、広がっていく細い血管の様子が確認され、皮弁作成後2.5日目に、真皮下血管網と筋膜上血管網に豊富な血管新生が認められ、それらの吻合も確認された。一方、対照皮弁では、皮弁作成後2.5日目には筋膜上の血管に血管新生が観察されるものの、皮弁の真皮下血管網での血管新生は明らかではなく、血管吻合が認められたのは、皮弁作成後3日目以降であった。[考察]真皮下血管網皮弁では、血管新生の場である豊富な血管網同士が直接接触し、移植床から真皮下血管網までの距離が近いため、母床からの皮膚への血行再開が早期に起こるものと考えられた。皮下組織を適切にthiningすることは、薄いという形態的な利点のみでなく、皮弁の早期血行再開にも関与していることが示唆された。