Research Abstract |
目的:前向きコホート調査によって,高齢者における歯の喪失の実態,および全身状態も含めた喪失リスク要因を明らかにすること。 対象および方法:平成10年度に実施済みのベースライン調査の対象者である70歳高齢者599名を2年後に追跡調査し,口腔内状況,全身状態,保健行動などベースライン時と同じ内容で,歯の喪失リスクと考えられる情報を収集した。分析対象者は,追跡できた402名(男214名,女188名)である。分析は個人単位および歯単位で行い,調査期間中の歯の喪失の有無とベースライン時の各種リスク情報との関連をみるためにロジスティック回帰分析を行った。なお,ベースライン時に残根,根面capであった歯牙の喪失は含めなかった。 結果および考察:調査期間中に歯を1本以上喪失した者は30.8%(124名)であった。喪失した歯はベースライン時に存在していた歯の2.86%(220本)であり,一人平均年間喪失歯数は0.274本であった。歯種別の喪失率は,上顎大臼歯で最も高く,下顎犬歯で最も低かった。歯の喪失リスクに関するロジスティック回帰分析の結果,個人単位の分析では,Body Mass Indexが24以上,IgG値(Immunoglobulin)が1900以上,Loss of attachment 6+mmの部位の割合が4%以上,全部被覆冠数が9本以上,日常生活活動(歩行,階段昇降,椅子からの立ち上がりなど)に支障のある者で,有意に歯を喪失しやすいことが示された。歯単位の分析では,未処置歯,ブリッジ支台,全部被覆冠,義歯鉤歯,Pocket DepthおよびLoss of attachment値の大きい歯で,それぞれ有意に喪失しやすいことがわかった。 今回の結果から,これまで報告されているう蝕や歯周疾患のリスク要因との関連がみられたほか,BMIやIgGなどで表された全身状態との関連も一部示唆された。しかし,全身状態が歯の喪失へ及ぼす影響を詳細にみるには,さらに追跡調査を行う必要があると考えられる。
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