Ras蛋白p21の情報伝達制御の分子機構に関する研究
Project/Area Number |
11771466
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
医薬分子機能学
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
畑 晶之 千葉大学, 薬学部, 助手 (50241972)
|
Project Period (FY) |
1999 – 2000
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2000)
|
Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 1999: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
|
Keywords | Ras蛋白p21 / 情報伝達制御 / G蛋白 / 量子化学計算 / 非経験的分子軌道法 / GTP-GDP変換機構 / 発がん機構 / 加水分解機構 / 半経験的分子軌道法 |
Research Abstract |
当初計画に従い、1 GTP加水分解反応機構-量子化学による解明、2 GTP加水分解反応機構-分子動力学計算による解明を行った。1については、非経験的分子軌道法によりGTP加水分解反応機構を明らかにした。反応に関与する水分子がGTPのγ-リン酸に近付くと、Lys16の側鎖のアミノ基からβ-リン酸の酸素原子及びγ-リン酸の水酸基からLys16側鎖の窒素原子へのプロトン移動が生じ、それにより水分子からプロトンがγ-リン酸の酸素原子に移動し、最終的にはγ-リン酸が解離する。この反応は一段階プロトンリレー反応であり、この反応に要する活性化エネルギーは、25.1kcal/molであった。2については、本研究で明らかにした反応機構について、正常Ras p21と変異Ras p21とでどのような違いがあるのか、どのような阻害メカニズムによりGTP加水分解反応が低下するのかを分子動力学計算を用いて調べた。正常Ras p21は、1,000ps間の時間経過においても、常に正常な活性部位構造を示した。しかし、発がん性を有するG12V変異Ras p21については、時間経過とともに活性部位構造が変化した。Lys16側鎖の窒素原子とγ-リン酸の酸素原子との間の水素結合が切れたり元に戻ったりを繰り返し、加水分解反応の活性部位構造を保持しない。つまり、発がん性を有する変異Ras p21の活性部位に対して、Lys16の空間的相対位置は不安定であり、時間変化に伴い活性部位構造が壊れて、それによりGTP加水分解反応が非常に起こりにくくなることを示している。これは、本研究で新しく見い出された、ブロッカーによらない生体反応の動的阻害メカニズムである。1、2より、Ras p21によるGTP加水分解反応機構は一段階反応であること、Ras遺伝子の点変異によってもたらされるGly12のアミノ酸の変異は、GTP加水分解反応メカニズムにおいて中心的役割を演ずるLys16の空間的相対位置の安定性に影響を与えていることを結論した。
|
Report
(2 results)
Research Products
(2 results)