Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
本研究の目的は、環境に存在する規則性の学習における潜在学習様式と顕在学習様式の効果を比較することであった。まず、平成11年度の研究においては、コンピュータ・ディスプレイ上に呈示されたターゲットの移動に合わせて、ハンドレバーを追従操作する知覚運動課題を用いた。ターゲットの移動パターンに内在する規則性に関する教示を受けた教示群と教示を受けなかった非教示群のどちらにおいても、規則性に関する学習効果が認められた。しかし、習得試行および保持テストにおける教示群のパフォーマンスが非教示群のパフォーマンスに比べて優れていたため、この実験で用いた課題においては、規則性に関する顕在的な知識が学習促進効果を持ったと言える。平成12年度においては、呈示する刺激をより実際の運動行動場面に近づけるため、テニスのサーバーを撮影したビデオ画像を呈示刺激として用い、潜在学習様式と顕在学習様式の学習効果を比較する実験を行った。この実験では、サーバーの動作に内在する特徴を教示した教示群と教示を与えなかった非教示群の被験者に、サービスのコース及び球種を予測させ、ボタン押し反応を行わせた。この実験の結果より、教示を与えられた顕在学習様式は、学習初期における反応の正確性を向上させるが、教示を与えられない潜在学習様式は、比較的多くの習得試行を行うことによって、正確性を教示群と同レベルまで向上させると同時に、反応時間の短縮という優れた学習効果を持つことが明らかとなった。