Research Abstract |
平成12年度は継続調査の金村別雷神社(茨城県つくば市豊里地区)に加え,ひたちなか市津田地区および水戸市中心部における住民の生活組織への参加動向の調査を通して,信仰圏の動態解明に関する分析を進めた。これらの調査結果の成果は以下の2本の学術論文に発表した。本年度の研究で得られた知見を整理すると次の通りである。 つくば市豊里地区の住民にとって,個人祈願の対象としては特定の御利益を持って奉じられる流行神的な利益神ではなく,地域の鎮守神として信仰が受容されていた。これに対して,雷を司り降雨をもたらす利益神としての信仰は,豊里地区各集落における共同祈願にみることができた。乏水性の筑波台地の上に位置する豊里地区各集落では,第2次世界大戦以前には農業生産を天水に依存する集落もあり,夏季の渇水時には降雨を求めて,金村別雷神社に祈雨祈願が行われていた。第2次世界大戦後になると,このような共同祈願を機縁として豊里地区の各集落には講が組織されていった。しかしながら講としての参拝は形骸化しており,固定化された世話人による代参か,もしくは氏子組織や自治会組織など他の組織の代表者が金村講世話人を兼務し,輪番制で選出される世話人が代参するのが通例である。豊里地区における金村講の特性は,講が宗教組織として独自の機能集団を形成しておらず,従属的組織となっている点にあるといえる。 続いて,ひたちなか市津田地区の調査の結果,「勝田式」と呼ばれる自治組織の再編により宗教組織をはじめとする地域集団が活性化されたことがわかった。適性規模となった新しい自治会では,新旧住民が自治会への参加を通して相互交流し,新たな住民ネットワークが生じている。この住民ネットワークの結節点として津田公民館が機能している。地区住民は公民館で行われる余暇活動を通して,相互のネットワークを強化・発展させていることが明らかになった。
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