Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
本研究は、19世紀末ヨーロッパで産業デザインや建築インテリアの革新的様式として登場したアール・ヌーヴォー様式が、日本の美術・工芸から決定的な影響を受けていた事実を証明することを目的とする。本年度の成果は以下の通りである。1、平成11年度に行った、19世紀末に収集されベルギー王立美術歴史博物館に未整理のまま所蔵されている江戸-明治初期の絵入り版本・写本調査のデータを整理し、コレクションの所蔵目録を出版した。これらの古書の多くは、絵本・画譜類あるいは絵入り狂歌本、地図など図像を伴う書籍であり、19世紀末日本美術愛好家やデザイナー自身によって収集されたことが明らかになった。彼等の多くが、同時に浮世絵版画や工芸品を博物館に譲渡しており、日本美術の一環として日本の図像を掲載した絵入り版本・写本に焦点をあてて収集していたことが考察できる。2、上記の絵本・画譜類が具体的にアール・ヌーヴォー様式のデザインのヒントになったことを明らかにするため、特にポスターに焦点を絞り比較した。ポスターは産業と芸術と生活にかかわる媒体である。19世紀末のポスターは公刊されていないものも多いので、ポスターコレクションで知られるブリュッセル市イクセル区美術館で写真撮影・データ収集をおこなった。そして、具体的にどのような日本の意匠がアール・ヌーヴォー様式のポスターデザインに取り入れられたかを比較分析する。成果はベルギー王立美術歴史博物館年報に発表する予定である。
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