Research Abstract |
アブダクションによるルール生成に関連して,主に文脈自由文法と非巡回連言質問の学習という二つの側面の研究を進めた.前者は,背景知識と質問を考慮したルール生成に示唆を与え,後者は,より直接的に,アブダクションによるルール生成の難しさと密接な関係がある. 文脈自由文法(context-free grammar,CFG)の学習は,これまでに様々な観点から研究が進められている.本研究では,自然言語習得の知見から,非終端記号間の半順序に基づいて下拡木(subpansive tree)という概念を導入し,この下拡木を背景知識として用いる質問学習の手法を提案した.そして,正則文法を包含し一般の文脈自由文法に包含される階層的文脈自由文法(hierarchical CFG)は,非終端記号に関する所属性質問を用いると効率よく学習できるが,その一方で,この質問を用いないと効率よく学習ができないことを示した. 非巡回連言質問(acyclic conjunctive query,ACQ)とは,出現する変数を頂点とし,各アトムに含まれる変数の集合を超辺とするような超グラフが巡回路を持たない確定節p(x_1,...,x_n)←A_1,...,A_mのことであり,もともとは関係データベースにおける問い合わせ質問として研究が進められてきた.このACQに対して,データベースからA_1,...,A_mと合致するデータを見つけてその結果をx_1,...,x_nに代入する評価問題,および,二つのACQに包摂関係があるか否か判定する包摂問題は,ともに効率よく解けることが知られている.本研究では,帰納論理プログラミングの側面から,与えられたデータベースの下で,例からのACQの学習可能性について議論した.そして,暗号理論の仮定の下で,p(x_1,...,x_n)の具体例である単純例,および,p(x_1,...,x_n)の具体例と単位節の組である拡張例のどちらからも,ACQを効率よく学習できないことを示した.このことは,既存の帰納論理プログラミングにおける確定節の部分クラスでは,包摂問題が効率よく解けることと効率よく学習できることが等価になるのに対して,ACQでは,包摂問題は効率よく解けるが効率よく学習できないという興味深い特徴が得られた.
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