Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
平成12年度では、名古屋大学現有の30keVイオン注入装置を用いてシリカガラスに対して水素・重水素イオン照射を行った。イオン照射前後の試料について、紫外〜赤外領域の吸収スペクトルを測定し詳しく検討したところ、水素・重水素イオン照射によってシリカガラス中ではSi-OHやSi-ODがSi-HやSi-Dよりも優先的に生成されることが分かった。Si-O-Siのサイトに水素(重水素)イオンが結合し、Si-OH(Si-OD)とE'centerが生成したことが推測される。その一方で、昨年度に引き続き原子炉照射下(東大・弥生炉)に置かれたシリカガラスやシリカ単結晶試料からの発光のその場測定を行うと共に、この応用として新たにγ線照射誘起発光測定にも着手し、γ線による電子励起効果と中性子による原子弾き出し効果をより明確に区別しながら照射損傷過程の統一的理解を図った。更に、原子炉照射中の試料の光吸収測定にも成功し、これによって試料中にあらかじめ存在する欠陥と原子炉照射によって形成される欠陥とを区別するだけでなく、照射初期において試料中にあらかじめ存在する金属不純物は欠陥形成を促進するがOH基は欠陥回復を促していることを見い出した。更にシリカガラスについてSiK殻吸収端X線吸収スペクトルを測定・解析し、原子炉照射前後の局所的な構造変化について検討した。原子炉照射によってSiO_4 unit間の結合が切断された事によってSi原子の周りの対称性が照射前よりも向上した事が見い出され、照射初期にシリカガラス中で起こる一種の構造緩和を捉えることができた。この結果を微小押し込み試験による硬度測定実験の結果と比較したところ、この構造緩和は、照射初期に認められるシリカの硬化現象の原因となっていることも明かとなった。
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