Research Abstract |
平成12年度においては,以下の2項目を計画していた.各項目に沿ってその成果を示す. 1.実用装置への拡張 屋外測定に際して,装置の縮小化や安定化,さらに目に見えない近赤外光線の光軸合わせ(アライメント)を容易に行うための工夫が必要となった.そこで,携行性と防振性の高い光学系を再製作し,また,可視域の半導体レーザを用いたアライメント機構を組み入れた.更に,受光部の改良を行い,受光感度の均一化を図った. 濃度算出,ガスフラックス算出等の演算のプログラムを開発し,DSP(ディジタルシグナルプロセッサ)による演算処理を可能にした. 2.ガスフラックスの測定実験 近赤外半導体レーザを光源とし,大気中の水蒸気を目的ガスとして,ガスフラックスの計測を試みた.まず,屋内における実験を行った.その結果, (1)計測した風速データから求めたパワスペクトルは,光軸上に配置した超音波風速計の風速データのパワスペクトルを光路長で除した結果と低い周波数で良く一致した.これは,本システムが被測定空間上に亙る支配的な空気の流れを推定していることを示している. (2)風速と大気中湿度の変動を同時測定した結果,両者は風速測定実験の結果において述べた周波数成分に対応する時間スケールで相関がある可能性を得た.これは,水蒸気が被測定空間の支配的な流れによって輸送されているためといえる. 以上は,本研究テーマの有効性の一端を示すものと考える. 屋外実験では,外気等による半導体レーザの温度変動の緩衝に十分な精度の温度制御が行えず,レーザの発振波数掃引の安定性を欠いた.従って,システムの温度調節精度を高める必要がある.今後,この問題点を克服し,実環境下でのデータの蓄積を行う. また,吸収スペクトル処理においてウエーブレット解析が有効であるという知見を得た.これを演算アルゴリズムの中に組み入れ,更に装置の完成度を高めて行きたい.
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