Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
本研究は、金融ビッグ・バンや不良債権償却の脈絡で我が国でも制度化された特定目的会社や特定目的信託、投資法人などを典型とする投資スキームを用いる集団投資と従来からの個別投資手段などの私法上の法的構造を前提として、そのような投資スキームを用いることによって、特に、所得課税上どのような問題点が生じるのかを、国際投資を念頭に考察したものである。本研究で明らかとなった点には次のようなものがある。1.第一に、我が国の現行所得税法は、利子所得、配当所得、一時所得、雑所得などの所得類型に、金融取引から得ちれた所得を分類し、その分類ごとに課税方法、税率なども細かく区々に分かれている。そのため、ストラクチャド・ファイナンスのような高度な法技術を用いた取引から得られる収益がこれらの所得税法上のどの所得分類に該当するかを判定することにはしばしば困難が生じている。他方、利益極大化を目指す納税者は、本来生じるべき所得の性質をこれらのストラクチャを通じて変換し、税負担の安価な所得類型に該当する性質を持つ所得の形で受け取ることができる(租税回避)。このような租税回避を防止するにはその都度個別立法によって租税回避を否認するという方法と、所得類型を見直し、金融取引から生じる所得は区分せずに一括して課税類型に入れ込むという所得類型の見直しという方法が考えられる。前者は、租税回避行為が発見される都度対応が行われるが、所得類型の分別を放置したままでは根本的な解決策とはいえない。後者の類型見直しは、その類型の限界についての曖昧さは残るものの、金融所得とでもいうべき所得類型に一括して課税するととから、前者の対応よりも根本的な対応を行いやすい、という利点がある。2.第二に、ストラクチャド・ファイナンスによる投資家の収益は、多くの場合、利子所得や配当所得の形態をとる。国境を跨ぐストラクチャド・ファイナンスの場合に投資家が居住地国で課税される以前に、源泉地国で源泉課税が行われることが多いが、その場合、租税条約上の軽減税率の適用要件としての「受益者」の意義については、従来我が国では議論されたことがなかった。欧米においても「受益者」の意義について注目されるようになったのはここ数年である。そこで、受益者の意義について、信託、仕組み金融、トリティ・ショッピングといった観点から検討を行った。結論としては、欧米においても受益者の意義について統一的な理解に達しているとはとうていいえず、また、信託法や他の法分野からの借用概念であると断ずる考え方も有力ではない。そこで、研究代表者は、トリティ・ショッピングの規制という目的と仕組み金融における仕組みの条約適格の振り分け基準という二つの目的からこの概念が用いられているのではないかとの結論に達した。本研究においては、金融制度の変化による投資・貯蓄形態の変化を国境を越える取引との関わりで観察し、国内租税法上の問題点、租税条約上の問題点を、金融所得の一元的把握と租税条約上の受益者概念の二つの論点に収斂させて検討を加えたが、私的取引法の異なる各国での動向については今後の課題としたい。
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国際税制研究 8号
Pages: 265-271
(社)日本租税研究協会第53回大会記録
Pages: 158-198
JETROユーロトレンド (印刷中)
総合税制研究 9号
Pages: 60-72
(社)日本租税研究協会第52回大会記録
Pages: 111-149
租税法研究 29号
Pages: 148-150
租税研究 604号
Pages: 81-92
総合税制研究 8号
Pages: 60-71
40004988866
租税研究 609号
Pages: 121-136
税研 92号
Pages: 23-28
税経通信 55巻12号
Pages: 101-107
租税研究 612号
Pages: 91-103
総合税制研究 7号
Pages: 66-92
Cahiers de Droit Fiscal International 84a
Pages: 539-569
信託研究奨励金論集 20号
Pages: 20-50