Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
本年度は、本萌芽的研究の最後の年度として、被害者や関連機関での最終的な補充調査を実施したほか、その成果の取りまとめの作業を行った。とりわけ、犯罪被害者の刑事ADRの特質を理論的に明らかにするため、典型的な刑事犯罪とは異なり、刑事事件として処理されると同時に、民事司法の領域でも損害賠償請求訴訟が提起されうる事件類型として、医療過誤事件をとりあげ、比較検討を行った。すなわち、民事訴訟提起が、「真相を知る」ためのものと考えられる前者と、金銭的賠償を目的とする後者という仮説の検討である。しかし、その結果は、むしろ、両者の相似性、それもいずれも金銭賠償問題でなく、より情緒的・社会的な動機による紛争処理行動であることを浮き彫りとするものであった。このことは、逆に、民事司法やADR型の紛争処理制度こそが当事者にとって、より意義のあるフォーラムとして機能する可能性を示しており、今後、そうしたフォーラムのあり方の提言へ向けて、より本格的な研究を展開していく予定である。なお、副産物ではあるが比較対象とした医療過誤紛争領域では、すでに著書の形で成果を公開している。
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