ウイルスによる宿主細胞周期異常の発現機構に関する分裂酵母を用いた研究
Project/Area Number |
11877051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Virology
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増田 道明 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80199702)
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Project Period (FY) |
1999
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1999)
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Keywords | ヒト免疫不全ウイルス / アクセサリー蛋白 / Vpr / 細胞周期 / 分裂酵母 |
Research Abstract |
エイズの原因となる1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)のアクセサリー蛋白Vprは宿主の細胞周期をG2期で停止させ、これはHIV-1の複製や病原性機構にとって重要であることが示唆されている。しかし、Vprによる細胞周期の停止機序は今まで不明であった。一方、ヒトなどの高等真核生物と同様の細胞周期制御機構を持つ分裂酵母でも、VprがG2期停止を起こすことが近年報告された。本研究では、Vprを分裂酵母の種々の変異株で発現させその影響を比較解析した。その結果、Vprによる細胞周期停止にはWee1、Ppa2、Rad24等の宿主因子が必要であることが明らかになった。Wee1は、G2期からM期への移行に必要な酵素Cdc2を抑制する蛋白である。Ppa2は蛋白脱リン酸化酵素2A(PP2A)の活性部位サブユニットであり、ユビキチン経路を介するWee1の分解にPP2Aが拮抗的に働く可能性が報告されている。従ってVprはPP2Aの活性化によりWee1の分解を抑え、蓄積したWee1がCdc2を抑制することにより細胞周期が停止する可能性が示唆された。この可能性については現在さらに検討中である。放射線や化学物質などで染色体DNAに損傷を生じた際、それが修復されるまで細胞周期を停止させる機構(いわゆるDNA damage checkpoint;DDC)を細胞は具備している。Rad24はこのDDCに必要な蛋白である。しかしVprによる細胞周期停止は、rad1変異株などDDCの働かない分裂酵母にも認められた。従ってVprによる細胞周期停止にDDCが直接関与している可能性は否定された。分子遺伝学的解析が容易で、ヒトの細胞とも機能的共通性のある分裂酵母は、ウイルスによる宿主細胞周期異常の研究にも有用であることが示された。分裂酵母を用いたウイルス学研究は今後新たな研究分野として発展する可能性が期待される。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)