Research Abstract |
放射線照射を行う際に,治療効果の増大,副作用の軽減を期待するには,生体のサーカディアンリズムを考慮にいれる必要がある.哺乳類において,一般に,メラトニンの血中濃度は,日中は低く夜間は高いというサーカディアンリズムをもつことが知られている.そこで,本研究では,放射線照射によるメラトニン分泌量の変化を検討した. ラットを行動測定装置(今回追加購入)内で明暗条件(12hr:12hr)で飼育した後,松果体をとりだした.松果体を培養した後に,20Gyの放射線照射を行なった.その結果,基礎分泌量は変化しなかったが,ノルエピネフリン刺激によるメラトニン放出量は,第1日目には変化しなかったが,第3日目には増加した. ヒトでは,放射線治療期間中における,血中メラトニン濃度の変化を調べた.肺癌のため入院中の患者で,転移性脳腫瘍が発見された例のうち,インフォームドコンセントの得られた患者を対象とした.放射線全脳照射は,10MV-X線を用いて,左右対向2門,1回200cGy,総線量50Gyで行なった.その際,照射前日(対照),第1日目(照射開始日),第3日目のそれぞれ日中(午後2時)と深夜(翌午前2時)に10mlの静脈採血を行い,血中メラトニン濃度をradioimmunoassay法で測定した.血中メラトニン濃度は日中は変化しなかったが,深夜では,照射第1日目,第3日目の両日とも照射前日の4-5倍に増加した. このことから,ヒトにおいてもノルアドレナリン刺激によってもたらされる夜間のメラトニン放出量は,放射線照射によって増加すると考えられた.しかし,ラットでは第1日目には変化がなかったことから,放射線照射に対するメラトニン放出の反応性において,ヒトと動物ではタイムコースが異なっていることが示唆された.
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