Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 1999: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
|
Research Abstract |
歯科用レジンを填塞した患者の唾液から女性ホルモン(エストロゲン)と類似した作用を持つBisphenol A(BPA)が検出され,乳癌細胞の増殖試験により,このレジンがエストロゲン様活性を示したことが報告された(Olea et al.,1996).この報告以来,歯科用レジンの内分泌撹乱作用に関する問題は歯科領域のみならず社会的にも注目されるようになった.Oleaらの実験結果に対しては種々の矛盾点が挙げられているが,材料の内分泌撹乱作用をバイオアッセイにより検証した報告が皆無であるため,国内外を通してこの問題に対する明確な見解は得られていない. 本研究では,この問題の結論を導くことを目的に,レポーターアッセイと呼ばれるin vitroのバイオアッセイを用いて歯科用レジンのエストロゲン様作用の有無を検討した.さらに,HPLCおよびGC/MSを用いてエストロゲン様活性の発現に関与した化学物質について検討を加えた. 実験の結果,被験材料のうち2種の米国製シーラントに5μg/ml以上の濃度でエストロゲン様活性が認められた.バイオアッセイの結果はOleaらの報告と一致したが,これらの材料からBPAは検出されなかった(検出限界値:100pg).一方,BPAと同じ250nM以上でエストロゲン様活性を示した疎水性モノマーBisphenol A dimethacrylate(Bis-MA)が、2種のシーラントからそれぞれ約4(w/w)%検出され,これらは活性発現濃度を上回るものであった.検出限界値(100pg)以下のBPAはエストロゲン様活性を示さなかったため,シーラントの活性発現に関与したのは,BPAではなくBis-MAであることが明らかとなった. Bis-MAはごく一部の歯科用レジンに添加されているが,歯科材料への使用は完全に排除されるべきと考える.一方,BPAの低用量理論は最近否定される傾向にあり,仮に検出限界値以下の微量のBPAがレジンに混入していたとしても生体に影響をおよぼす可能性は極めて少ないと考えられる.
|