Project/Area Number |
11F01005
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 外国 |
Research Field |
Linguistics
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田窪 行則 京都大学, 文学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DAVIS Christopher 京都大学, 文学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2011 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2011: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 焦点 / 係助詞 / 係り結び / 琉球語 / 宮良方言 / 八重山方言 |
Research Abstract |
本研究では、焦点に関わる統語的及び意味的諸相を明確にするために、それらに関連する焦点小辞を中心に検証することを目的とした。消滅の危機に瀕している琉球諸語における焦点に関わる現象の詳細な観察(課題(1))によって、焦点と文構造とのインターフェースの理論構築につとめた(課題(2))。そのために八重山語の3つの方言(宮良方言、白保方言、川平方言)の現場調査を行った。本研究の調査では、この方言によっての自然対話を録音し、その書き起こしを行いながら各方言の特徴を調べた。録音データの公開と保存のために、京都大学の研究室のデータベースに格納した。録音データはあわせておよそ30時間のものとなった。 焦点される品詞に伴う係り助詞「どぅ」は琉球語の多くの方言で見られるが、本研究で調べた方言の自然対話に特に頻繁に出てくる。係り助詞「どぅ」といわゆる「係り結び」という現象に関するデータを集めるために、自然対話の他に方言話者と文法調査も行った。宮良方言の調査では、その方言の「どぅ」の以下の特徴が分かった: (1)「どぅ」が出る時には、述語の接尾辞「ん」が使えなくなる。 (2)「どぅ」は基本的に一つの文では一つしか使われないが、例外もある。 (3)「どぅ」は強調される品詞にも疑問詞にも付くけど、協調される品詞・疑問詞がいわゆる「島」の中に入っている場合、「どぅ」は島の後に付く。しかし、強調される品詞・疑問詞が関係節の主語である場合、例外的な使い方もある。(3)の例外と(2)の条件に反する例外は同じような環境で起こるので、関係があるように思われる。 以上の3つの特徴をまとめて説明するために、統語論上の仮設を立てた。「どぅ」と「ん」が出る文の意味的特徴もこの構成によって自然に計算することが出来ることを示し、文法上の特徴と意味上の特徴に必然的な関係があると主張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いくつかの方言を見ているうちに、宮良方言の「どぅ」の分布が研究目的の課題(1)と(2)を明らかにするために非常に大事なデータになることがわかった。それ以降主に宮良のデータを集めて、分析してきた。研究計画の二年間が10ヶ月と短縮された期間の間に、課題(1)と(2)の達成は計画通りに進展している。研究計画ではもうひとつの課題(標準日本語の対比を表す係り助詞「は」の実験によっての観察と分析)は短縮のため進展できなかった。学会などで宮良の「どぅ」に関する統語・意味論的な分析を発表し、今年内に雑誌に論文を出す予定である。自然対話の書き起こしと文法記述も、今年五月の末までに本の章として出す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進のために宮良方言の調査を続ける予定である。宮良の「どぅ」の分布は、接尾辞「ん」だけでなく、テンスや相を表す述語の接尾辞にも関係があることがわかった。よって、今後の調査ではテンスと相のシステムの詳細を明らかにし、焦点を表す「どぅ」との分布と意味関係を明らかにする。同時に、他の方言における「どぅ」の分布との比較研究も行う予定である。標準日本語における対比を表す「は」も、今年から琉球大学での実験によって計画通りに進展する予定である。
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