Research Abstract |
光学活性化合物の効率良い供給法の開発は急務である.さまざまな供給法の中で,触媒的不斉合成は原理的に極少量の不斉触媒が無限の光学活性化合物を供給し続けることができる高効率プロセスであり,この触媒的不斉合成は30年以上活発に研究されてきたが,完成度の高い不斉反応の例は非常に限られている.ロジウムまたはルテニウム触媒による不斉還元反応のように信頼性の高い,中には工業的利用にまで到達したものも開発されているが,いずれも不斉炭素中心の構築に関するものである.これに対して,不斉ケイ素中心を持つ有機ケイ素化合物は,その有用性が期待されているにも関わらず,未だに効率的な不斉化の例はほとんど報告されておらず,未開拓の分野と言ってもよい. このような背景のもと,今回,不斉ケイ素中心をもつ有機ケイ素化合物の新しい触媒的不斉合成法の開発を目指して研究を行い,分子内にアルコール部位をもつプロキラルな含ケイ素ビアリール化合物を出発物質として用いることにより,ロジウム触媒存在下,非対称化を伴うエナンチオ選択的なトランスメタル化という新しい手法による不斉誘起が可能であることを見出し,ケイ素上に不斉点をもつケイ素架橋ビアリール化合物であるジベンゾオキサシリンを高収率かつ高いエナンチオ選択性で合成することに成功した.この反応においては,ロジウム触媒に対して用いる不斉配位子の比率が重要であることが分かり,最適条件下において様々な不斉ケイ素中心を持つジベンゾオキサシリンの効率的な不斉合成を実現した.
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