Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2012: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Research Abstract |
物質優勢宇宙の成り立ちは未だにそのメカニズムがはっきりしておらず,現代物理学に於ける大きな課題の一つとなっている.この問題への理解のためには,CP対称性,即ち粒子と反粒子の対称性を破る物理過程を詳細に調べる事が重要となる.中性K中間子が中性パイ中間子とニュートリノ,反ニュートリノ対に崩壊する過程は,CP対称性を破る過程で,現在の素粒子とその相互作用を最も良く記述する標準理論では非常に抑制されており,その崩壊確率(分岐比)は2.4x10^(-11)と計算されている。一方で,超対称性等,標準理論を越えた物理が存在すれば,モデルやパラメータに依っては崩壊確率が大きく変化する事が予言されており,従ってこの崩壊を調べる事で標準理論を越えた新しい物理にせまることが出来る.そこで,私は茨城県東海村の大強度陽子加速器施設(J-PARC)において,未だ観測されていないこの崩壊事象を更に高い感度で探索するため,KOTO実験を押し進めてきた.平成24年度は,検出器の実機建設を行い,実際のK中間子ビームを用いたこれらのコミッショニングを行った.特に私は,低物質量ながら高い検出効率で荷電粒子を捉える荷電粒子検出器や,大量の中性子や光子が残存する環境下で高エネルギーのγ線を検出するビームホール光子検出器等の実機製作とそれらのインストールを行った.これらの検出器は,崩壊事象の探索に於いて背景事象を排除するために必要不可欠なものであるが,実際のビームを用いた試験により安定動作しており,且つ十分な性能を有している事を確認する事が出来た.東日本大震災の影響により,J-PARC及び,当時建設途中であった本実験の検出器の復旧に時間を要したため,昨年度中に崩壊事象の探索を行うにはいたらなかったが,世界最高感度での実験を行うための準備を完了する事が出来,本年度初頭のビームタイムに於いてデータ取得を行い,崩壊事象を探索を行うことを予定してる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の後にその復興を含めて実験全体のスケジュールを再度考慮し,現在はその計画を遅らせる事なく,検出器の開発とその実機建設を進める事が出来た.更に実機について,K中間子ビームを用いた性能評価を行い,全体に亘って検出器が十分な性能を有する事を確認する事が出来た.物理データを取得するには至っていないが,そのための検出器の準備や基本的な動作の理解を進める事が出来,2013年5からのビームタイムで世界最高感度での実験を行う見通しがたった.
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