幾何学的フラストレーションを有する物質群に現れる状態の統一的理解
Project/Area Number |
11J01381
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(理論)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 隆威 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2011 – 2013
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2013)
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Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2013: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2012: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 強相関電子系 / 金属絶縁体転移 / モット絶縁体 / 幾何学的フラストレーション / 量子スピン液体 / フラストレーション |
Research Abstract |
本研究の目的は、幾何学的フラストレーションの強い量子系の基底状態や低励起状態の性質を, 格子ゆがみ・乱れ・外部磁場といった摂動に対する敏感な応答に注目して統一的に理解することである。とくに、極低温でも長距離秩序が生じず明示的な対称性を破らない量子スピン液体状態の物性を明らかにすることを目指した。第3年度は、実在の物質群に必然的に含まれる次近接相互作用に着目し、三角格子上のハイゼンベルグ模型およびハバード模型を量子数射影多変数変分モンテカルロ法で詳細に解析した。以下に、その詳細を述べる。 1. 次近接交換相互作用を考慮した三角格子ハイゼンベルグ模型の解析 高精度な数値計算手法である多変数変分モンテカルロ法を用いて、三角格子上の次近接交換相互作用J2を考慮した量子スピン1/2ハイゼンベルグ模型の基底状態相図を詳細に調べた。その結果、スピンが120度構造を持つ反強磁性相(120度ネール相)とコリニアな2副格子構造を持つ反強磁性相(ストライプ相)に挟まれた領域にスピン液体相を見出した。120度ネール相とスピン液体相の境界は連続転移であり、一方、ストライプ相とスピン液体相の境界は1次転移であった。スピン励起を計算した結果、このスビン液体相はギャップレスなシングレット励起及びトリプレット励起で特徴付けられることが分かった。また、臨界点でギャップがシステムサイズの-1/2乗で減衰するふるまいがスピン液体相にまで残っており、スピン液体が動的臨界指数z=1で特徴付けられる臨界的な状態であるという示唆を得た。スピン相関は距離の-1乗で減衰し、この指数がスピンギャップから得られた動的臨界指数と整合することも確認できた。さらに、シングレット励起及びトリプレット励起をブリルアンゾーン上の検証可能な全運動量で計算した結果、分散幅が非常に小さいという傍証を得た。 2. 次近接ホッピングを考慮した三角格子ハバード模型の解析 次近接交換相互作用を考慮した三角格子ハイゼンベルグ模型に現れる非自明な量子相の存在に動機づけられて、純粋な幾何学的フラストレーションに加えて電荷ゆらぎが存在した場合にどのような量子相が実現するのかを多変数変分モンテカルロ法を用いて詳細に解析した。次近接ホッピングを考慮した三角格子ババード模型の解析の結果、金属相と反強磁性相(120度ネール相およびストライプ反強磁性相)に挟まれた領域に2種類の基底状態相の候補を見出した。一方はスピン構造因子の最大値が散漫なスピン液体相であり、他方は実空間でup-up-down-downのスピン構造を持つ絶縁体状態である。どちらも負の次近接ホッピングが大きくなると一層安定化した。スピン励起を計算した結果、どちらの状態もギャップレスなシングレット励起及びトリプレット励起で特徴付けられることが分かった。また、どちらの状態もΓ点のトリプレット励起に有限のギャヅプが存在し、通常の反強磁性絶縁体および過去に提唱されてきたスピン液体と異なる状態が実現していることが分かった。シングレットギャップレス励起は運動量空間で等価な3本の線上に存在しており、1次元的なスピン液体を3方向に重ね合わせた状態が実現している可能性を指摘した。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Report
(3 results)
Research Products
(29 results)