Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
バイオフィルムとは固体表面上に付着する微生物とそれらが生産する細胞外多糖によって構成される高次構造体である。バイオフィルムは、医療面では慢性感染など、産業面では水処理膜の目詰まりや金属腐食などを引き起こすため問題視されている。成熟したバイオフィルムは薬剤や免疫応答に対する強い耐性を有することから、その除去は非常に困難である。そのため、バイオフィルムを完全に除去する新規手法が求められている。多くの細菌では、ある環境条件にさらされた際に自発的にバイオフィルムを崩壊させるメカニズムを有している。本研究では、成熟バイオフィルムが崩壊されるメカニズムを生物学的に解明するとともに、その知見を基として産業面で問題となっているバイオフィルム除去を目的としている。バイオフィルムから細菌が離脱するためには二つの要素が必要である。細胞外マトリクスの形成が抑制される点と、鞭毛を用いた運動性が向上される点である。それらをコントロールする物質として細胞内情報伝達物質であるcyclic di-GMPが知られている。本研究では大腸菌をモデル微生物として研究を進め、これまでに葉酸代謝経路の阻害剤として知られているトリメトプリムがcyclicdi-GMP濃度を調節することを示してきた。特にトリメトプリムはバイオフィルムの構成成分であるアミロイドタンパク合成を制御していた。前年度までに網羅的遺伝子解析によりトリメトプリムにより変動する遺伝子群を特定したが、本年度は定量的PCRによりその遺伝子転写量の変化を確認した。さらに、数種の変異株を用いてトリメトプリムとバイオフィルムの関係を分子レベルで明らかにした。
(抄録なし)
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