新しいX線光電子分光理論によるプラズモン励起機構の解明
Project/Area Number |
11J03465
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Physical chemistry
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
風間 美里 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2011 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2012: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 光電子分光 / プラズモン / 光電子回折 / 弾性散乱 |
Research Abstract |
金属や半導体などのX線光電子スペクトル(XPSスペクトル)に現れるプラズモンサテライトピークには顕著な光電子回折効果が実験的に観測されてきたにもかかわらず、これまで計算でその効果を考慮することができなかった。本研究では光電子がプラズモンを励起する前後で周囲原子から受ける弾性散乱の効果を完全に考慮できる量子ランダウ公式を用いて第一プラズモンピークを計算し、弾性散乱、光電子回折効果を考慮したうえで(1)プラズモンピークの形状、(2)3つのプラズモン励起過程:Intrinsic,Extrinsic,そしてそれらの干渉項の相対的重要性を議論することを目的とした。これらの研究により散乱を無視した従来の計算の評価とプラズモン励起機構の包括的理解を目指した。 Al(001)面から2s光電子が320eVのX線により励起されて垂直に出射する場合に光電子強度の深さ分布を計算したところ、散乱を無視した場合には表面から約15層のところで強度が0に収束するのに対し、無限回の弾性散乱を考慮すると光電子回折効果により7層目で十分な収束が得られることが分かった。その結果として、最終的な(実験で観測されるスペクトルに対応する)計算スペクトルで、表面プラズモンピークのバルクプラズモンピークに対する相対的重要性は、弾性散乱を考慮した場合により高くなった。光のエネルギーを200eVに変えると、最終的なスペクトルの形状は散乱を入れた場合と入れない場合でほとんど差が見られなかったが、深さ分解したスペクトルには大きな差が見られており、やはり弾性散乱が重要であることが分かった。他にもNa,Liでエネルギーを変えながら計算を行った。光電子回折効果により深さ分布が大きく変化しうること、そして光電子強度のエネルギー依存性に振動が生じることから、結果として表面・バルクプラズモンピークの強度比や、ピークに占めるIntrinsic・Extrinsic過程の寄与が大きく変化しうることが分かった。このことからプラズモン励起過程の正しい理解のためには弾性散乱を含めた計算が非常に重要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Al,Na,Liで光の偏光ベクトルと光電子の波数ベクトルが平行に近い場合について、エネルギーを変えながら第一プラズモンスペクトルを計算し、弾性散乱効果を調べることができたため。電気双極子禁制方向について調べるにはプログラムに改良を加える必要があるが、技術的な問題であり、対応可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
量子ランダウ公式は導く際にいくつかの近似を用いており、それらは高エネルギーのときほど良い近似である。プラズモンスペクトルにおける弾性散乱効果を調べるには電気双極子禁制方向が興味深いため、その方向で光のエネルギーを変えながら計算を行っていく必要がある。ただし、光の偏光ベクトルと光電子の波数ベクトルが垂直に近づいていくと、光電子の運動エネルギーが1000eV以上の高エネルギーでなければ量子ランダウ公式を使うことができず、計算コストが膨大になる。そのため、並列計算できるように計算プログラムに改良を加える必要がある。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)