Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究は、動物モデルを利用してDSS誘発大腸炎に影響を及ぼすAPCタンパク質の責任ドメインを同定することを目的とし、正常および組み換えApc遺伝子を用いてTransgenicラットの作製およびDSS誘発大腸炎の感受性を検討することとした。ナショナルバイオリソースプロジェクトラットで保存、提供されているF344-BACクローン大腸菌株を用いてBACクローンを増幅、抽出および精製した。精製した直鎖状BACDNAを、顕微授精法によりKADラット胚の雄性前核に顕微注入を行い、102個の受精卵を移植した結果、22頭のトランスジェニックラットを作出した。しかし、これらの中にトランスジェニック陽性の個体は検出されなかった。そこで、タンパク質レベルでDSS誘発大腸炎に影響を及ぼすAPCタンパク質C末端の責任ドメインを同定することとした。FLAGタグ化ラットAPC-C末端ベクター、およびV5タグ化ラットDLG1、DLG5ベクターをそれぞれ作製した。それらをHela細胞に共トランスフェクションし、免疫沈降法によりAPCタンパク質C末端領域と各タンパク質との相互作用を検討した。この結果、APCタンパク質C末端領域は、従来結合が確認されているEB1だけでなく、細胞接着に関与するアダプタータンパク質であるDLGファミリーのDLG1、DLG5との結合が観察された。また多重蛍光免疫染色の結果、DLG5はAPCと同様に、大腸炎症領域において血管内皮細胞に強い発現が観察された。従って、APCタンパク質のDLG結合ドメインがDSS誘発大腸炎に影響を及ぼすAPCタンパク質の責任ドメインということが示唆された。近年DLG5は、ヒト炎症性腸疾患の関連遺伝子として報告されており、本研究結果は、APCタンパク質が持つ大腸炎発症及び粘膜修復過程における新たな分子メカニズムを示す重要な知見となる。また、APCとDLG5との相互作用がヒト炎症性腸疾患の病態解明に関与することを示唆するものである。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
本年度は主にApc組換えBAC遺伝子導入ラット個体の作出、およびApc変異ラット由来初代細胞を用いた大腸炎発症時における表現型の比較検討、APCタンパク質C末端領域に結合する大腸炎関連タンパク質の同定に精力的に取り組み、APCタンパク質C末端領域と大腸炎関連たんぱく質DLGSの相互作用が大腸炎高感受性に影響を及ぼすことを明らかとした。本年度得られた研究成果は、大腸炎におけるAPCタンパク質の生理機能を解明する上で、非常に重要な知見である。
近年肌G5は、大腸の慢性炎症を主症状とするヒト炎症性腸疾患の関連遺伝子として報告されていることから、本研究結果は、APCタンパク質が持つ大腸炎発症及び粘膜修復過程における新たな分子メカニズムの一端を解明したものである。今後APCとDLG5との相互作用を検討することで、ヒト炎症性腸疾患の病態解明に寄与することが期待される。
All 2013 2012 2011
All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results) Presentation (7 results)
American Journal of Pathology
Volume: 182(4) Issue: 4 Pages: 1263-1274
10.1016/j.ajpath.2012.12.005
BMC Cancer
Volume: 12(1) Issue: 1 Pages: 448-448
10.1186/1471-2407-12-448
Cell Reports
Volume: 2(3) Issue: 3 Pages: 685-694
10.1016/j.celrep.2012.08.009