Project/Area Number |
11J05844
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Evolutionary biology
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤戸 尚子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2011 – 2013
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
|
Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2012: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
|
Keywords | 多型 / PSMB8 / MHC領域 / 平衡選択 / 免疫プロテアソーム / ポリプテルス / 共進化 / 獲得免疫 |
Research Abstract |
本研究ではこれまでに,二系統のPSMB8遺伝子(A系統とF系統)が条類の共通祖先から約4億年にわたり、平衡選択によってアリルとして維持されてきた可能性を示した。これまでに知られてきたく種を超えて保存された多型〉の存続期間は、最長のものでも数千万年程度であるが、これに対し本研究では、種どころかく亜綱〉を超えて、約4億年にわたって維持されてきたと考えられる二型の存在を示した。 しかしながら、集団遺伝学の研究者からは、これほどの長期にわたり多型が維持されることがあり得るのか、二系統の遺伝子は本当にアリルなのか、という懐疑的な意見が寄せられている。本研究ではこれまで、ゲノムPCRにより二系統のPSMB8遺伝子が親子間でどのように伝えられていくかを分析することで、これらの遺伝子がアリルであることを示してきたが、集団遺伝学分野からの疑問に応えるにはより明確なデータが必要である。本研究は、二系統の遺伝子がアリルであることをより明確な形で示すことを目的に、ポリプテルス、及びゼブラフィッシュを用いて二系統の遺伝子の周辺領域配列を解読し、これらがゲノム上の同じ場所に位置することを示すことを目指している。 本研究では一昨年、多研究グループの作成したポリプテルスBACライブラリをスクリーニングし、PSMB8ののっているクローン一つの塩基配列を解読した。今年度はそのBACクローンウォーキングを試みたが、隣接するクローンを得られなかったため、国立遺伝学研究所の比較ゲノム研究室との共同研究を行い、そのポリプテルスBACライブラリをスクリーニングし、PSMB8ののっているクローンおよび近傍のクローン4個を同定した。これらの塩基配列(391kb)を解読したところ、前述のBACライブラリに由来する配列とはPSMB8遺伝子付近の遺伝子の並び方ががまったく異なることが判明した。詳細なdot plot解析を行ったところ、二つのBACライブラリ由来の配列は、中心の遺伝子が並んでいる領域に関しては遺伝子のエキソン部分を除き全く相同性が見られないが、その外側のトランスポゾンのみが点在するような遺伝子のない領域は98~99%の相同性を示す。今回解読した配列中のPSMB8遺伝子はともにF系統に属するが、そのコーディング領域の相同性は75%と非常に低く、またイントロン領域には相同性はみられない。本研究ではこのようなハプロタイプがA系統についても形成されており、そのために4億年もの長きにわたり相同組換えによるホモジェナイゼーションを免れてきたものと考えている。又、A系統MB8遺伝子を含むMHC領域が既に解読されているゼブラフィッシュについては、F系統を含むMHC領域配列をいくつかの部分に分けてPCRにより増幅し、解読を進めている。まだ完全につながってはいないが、これまでの結果から、ゼブラフィッシュにおいてもPSMB8遺伝子の前後数十kbにわたり、非常に相同性の低い領域が広がっていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最初に着手したBACライブラリーでは質の問題がありBACクローンウォーキングができず、研究が中断するかに思えたが、遺伝研との共同研究により良好な質のライブラリーが手に入った上、BACクローンのシークエンス作業をお任せできたため、当初の計画より格段に速く、新規ゲノム配列であるポリプテルスMHC領域配列が明らかになってきている。交付申請に記したA系統のハプロタイプの解読はまだ目処が立っていないが、昨年度の結果からポリプテルスMHC領域には当初の予想を超えた規模のハプロタイプが存在することが明らかとなったため、A系統のハプロタイプ解読には新たなBACライブラリーの構築等の大がかりな対策が必要であると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では引き続きポリブテルスMHC領域配列の決定を急ぐとともに、A系統を含むハブロタイブの解読を行うための共同研究の可能性を模索したい。又、昨年度収集してPSMB8遺伝子の多型解析を行っている多数の個体の野生ポリプテルスサンプルについて、MHC領域遺伝子のより詳細な多型解析を行いたい。またポリプテルスにおいて、ハプロタイプ間で遺伝子の並び方が異なっていたことをうけ、ゼブラフィッシュのF系統を含むMHC領域配列解読についても、tailPCRなどの方法を新たに用いることで、完全解読を急ぎたい。
|