インスリンの時間変動による肝細胞の糖放出制御機構の解明:実験と数理モデルでの解析
Project/Area Number |
11J06435
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Cell biology
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 怜 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2011 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2012: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | インスリン / 糖代謝 / 時間情報コード / 時間パターン / システム生物学 / シミュレーション / メタボローム / ネットワークモチーフ / 微分方程式モデル |
Research Abstract |
前年度までに、インスリンのステップ刺激(一定刺激)に対し、糖代謝を制御する主要な代謝経路である解糖系、糖新生経路、グリコーゲン経路すべてが応答して、糖の放出(細胞外グルコース濃度)が抑制されることを見出した。さらに、同じインスリンのステップ刺激(一定刺激)であるにもかかわらず、各経路は異なる時間的な変動のパターン(時間パターン)を示すことが分かった。このことにより、インスリンの時間パターンによって各経路が選択的に制御されることが示唆された。本年度はこのメカニズムを詳細に解析するためにまずは数理モデルの構築に取り組み、実験とシミュレーションをフィードバックしながら、シンプルかつエッセンシャルなモデルの構築に成功した。モデル上の経路遮断などのシミュレーションにより、インスリン刺激に対する各経路の応答性の違いが、ネットワーク構造(制御構造)の違いによってもたらされていることが分かった。さらに、インスリンの時間パターン依存的な選択的制御機構について調べるために、インスリンのパルス刺激(急激な変動)とランプ刺激(ゆっくりとした変動)に対する各経路の応答性を検討した。その結果、それぞれの経路が持つネットワーク構造の違いによって、糖新生はステップ、パルス、ランプのすべての刺激パターンに応答することができる一方で、解糖系およびグリコーゲン合成は、急激な変動を含むステップとパルスの刺激にのみに応答できることが分かった。このことは、インスリンの時間パターンによって各経路が選択的に制御されうることを意味しており、長らく不明であった基礎分泌や追加分泌といった生体内におけるインスリンの時間パターンの生理学的な意義の解明に一石を投じる大変重要な示唆である。今後については、実際に生体内でこのような機構が存在しているかを確かめるために、初代培養肝細胞ならびにラットなどを用いたin vivoでの検討を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に掲げた2つの目的である「インスリン刺激による糖の放出制御機構の解明」ならびに「インスリンの時間パターンによる糖代謝経路の選択的制御機構の解明」の2つについて本年度中に明らかにすることができたため、順調に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、当初か掲げた目的に対しては十分に取り組むことができた。その一方で、解糖系の中心的代謝物であるフルクトース1,6ビスリン酸(F16P)については、その測定の難しさから、シミュレーションのみによる検討でとどまっているという問題がある。実験的に検証するために、同じ解糖系に存在する付近の代謝物をF16Pの代理として測定したり、再度メタボローム解析によって様々な時間パターンを持つインスリン刺激に対する応答を調べるなどしたりする必要があると考えられる。また、本研究においては培養細胞を用いたが、in vivoのレベルでこのような機構が同様に存在しているか検討する必要がある。したがって、今後は、まずは初代培養肝臓細胞を用いて同様の検討を行うとともに、ラットなどを用いた動物実験を行い、実証する必要があると考えられる。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)