Budget Amount *help |
¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2013: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2012: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2011: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
|
Research Abstract |
キクイガイ科二枚貝類は, 深海に沈んだ木材に穿孔して生活し, 木を餌資源とする極めて特異な分類群である。本科の多様性とその多様化の背景を明らかにするため研究を進め, 平成25年度は主に以下の成果が得られた。1. 東北沖太平洋岸において, 新青丸を用いた追加調査を実施した。当海域では先行する多数の深海調査によって多数のキクイガイ類標本が得られてきたが, それらの試料は生時に観察すべき附属的形態形質が不明のままであったため, 記載分類を実施するのが困難であった。この追加調査によって十分な情報が得られ, 当該海域における未記載種の整理を進めた。2. 特定の植物組織にのみ棲息するキクイガイ類はこれまで知られていなかった。しかし, 南西太平洋産の試料の検討を進めた結果, 「ヤシ類果実の内果皮でのみ生活する」3新種の存在が明らかとなった。これらの新種は特徴的な殻形態をもち, 形態的・分子系統学的に既知のどの属にも該当せず, 新属を設立する必要があることも明らかとなった。分子系統学的検討の結果, 本新属はキクイガイ科の原始的な群の一つであること, そして, 本新属の推定出現年代は約120Myaであることが明らかとなった。この分岐年代推定値はヤシ類植物の出現と整合的であり, 本新属が白亜紀前期にヤシ類へ適応進化したことを示唆している。3. 現地調査の過程で得られたハマユウガイ科ダイアナハマユウ属の1新種を新種記載した。本種は二枚貝などの穿孔生物によって提供される隠蔽的環境に特化して棲息していることから, 穿孔生物の活動によって提供される隠蔽的環境が, 非生物起源の硬基質環境においても種の多様性創出に寄与することを示唆する一例であると考えられる。4. 現地調査の際に得られた沈木試料について海洋研究開発機構との共同研究を進め, 後者が中心となり, 沈木から単離したNovosphingobium属細菌のゲノム解析等を実施し, これが木質リグニン分解の代謝能を有することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により, キクイガイ類は, 1)共生細菌を水平獲得して鰓に住まわせ, 窒素固定させ, 窒素源として利用し, 2)自身がセルラーゼに分類される数多くの糖質加水分解酵素を産生し, 木質セルロースを分解して炭素源として利用するうえ, 3)多種類のセルラーゼを運用することで多くの樹種と植物組織に適応して生活でき, そして 4)合理的な複数の性表現によって効率的に生殖・分散することができる, といった「キクイガイ類の多様化の要因」を明らかにすることができ, 概ね順調な進展が得られたと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
東関東大震災の影響により, 当初予定していたサンプルの入手が困難となったうえ, 共生細菌のハンドリングが困難であることがわかり, 生体を用いた実験成果は思うように導くことができなかった。これらについての検証を進めるいっぽう, これまでの成果を着実に論文化して行く。さらに, トランスクリプトーム解析によって得られた遺伝子情報をもとにし, 発展的研究にも着手して行く予定である。
|