Research Abstract |
以下の2点を実施した. (I)複数状況を持つ自由選択課題におけるラット前頭前野と背内側線条体の神経活動 研究員は, 報酬一定条件と報酬変動条件を任意の試行順序で持つ自由選択課題を, 5匹のラットで実施し, 27個の内側前頭前野と27個の背内側線条体の神経細胞から活動を計測した. その結果, 前頭前野では, 線条体に比べて, 左右の行動選択と報酬の有無の両方を表現する神経細胞が, 有意に多かった. 一方, 線条体では, (i)報酬の有無と試行条件を表現する細胞, (ii)左右の行動選択前に, 報酬の期待値を表現する細胞が多かった. このように, 前頭前野と線条体の神経細胞は, 異なる課題表現を持つことがわかった. (II)二光子顕微鏡による状況把握課題時のマウス神経活動の多数同時計測 研究員は, 音源位置推定課題時のマウスで, 二光子顕微鏡で, 後部頭頂葉の神経活動を多細胞同時計測した. 同課題で, マウスは, 仮想空間上を音源方向に走る. マウスは, 音源通過後に, 水の出るポートを舐める(リッキング)と報酬の水を得た, 同課題は, 音源からの音を, マウスに常に提示する条件(連続音条件)と, 断続的に提示する条件(断続音条件)の試行を, 任意の順序で提示した. 両条件で, マウスは音源に近づくと, リッキングを増加させた. また, 断続音条件の無音区間でも, 音源までの距離に応じてリッキングは増加した. 二光子顕微鏡法で計測した540個の神経細胞群の活動から, 音源到達までの距離と時間を, 線形回帰(lasso)でそれぞれ推定した. その結果, 頭頂葉の神経細胞群は, 到達時間に比べて, 距離の推定に優れた. また, 断続音条件の無音区間では, 直前の有音区間に比べて, lassoの推定距離が, 短縮・更新した. この結果は, 頭頂葉は, 音刺激だけでなく, マウス自身の行動や記憶に基づいて, 音源距離を表現・更新することを示唆する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「複数状況を持つ自由選択課題におけるラット前頭前野と線条体の神経活動」の研究では, 神経活動の解析を進めたが, 論文投稿はできなかった. 一方, 「二光子顕微鏡による状況把握課題時のマウス神経活動の多数同時計測」の研究では, マウスの行動実験が完成した. また, 複数のマウスで, 神経活動計測を実施できた. さらに, 本研究の成果は, 国内学会で発表した. このように, 前者の研究は遅れたが, 後者は, 計画以上に進展した.
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Strategy for Future Research Activity |
「11. 現在までの達成度」に記述した前者の研究では, 成果を学術雑誌に投稿する. 後者の研究では, マワスの行動実験・神経活動計測・データ解析を継続する. 得られた成果は, 国内・国外学会で発表する. また, 今年度後半では, 学術雑誌に成果を投稿し, マスメディアに発表する.
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