Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2013: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2012: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Research Abstract |
光電子回折は元素・サイト選択的に表面構造解析が可能であり, 触媒解析法として理想的な特徴を持つ. 本課題ではこれまで, 次世代の水素化脱硫(HDS)触媒として期待が持たれるNi_2Pの単結晶基板を用いて, 光電子回折により原子構造・電子状態の解析を行ってきた. その結果, バルクに局在する2種類のNiサイトを区別して状態観察することに成咳し, 本分析法は原子構造と電子状態の関連を緻密に調べることに最適であることを実証した. 本年度はこれまで確立した光電子回折を観点とした解析技術により, 最先端の触媒研究で着目されている表面系を用いて, 従来明らかにされていない触媒表面の構造とその触媒特性の関連を明らかにすることを目的とした. 最近, Ni_2Pの実触媒開発では, Co, Mo, Feなどの遷移金属を添加するとHDS反応の触媒特性に変化が現れること力報告されている. 特に, Feと合金化させたNi_2P表面はHDS反応における選択性が飛躍的に向上することが明らかにされている. しかし, 実触媒のキャラクタリゼーションで強力なX線吸収微細構造(XAFS)では, バルク中に局在する2種類のNiサイトを区別して観察することが難しく, 従来, 元素識別した詳細な構造は明らかにされていなかった. そこで本研究では, Ni_2P単結晶上にFcを数原子層蒸着して, 表面に形成される構造を解明し, さらに, その触媒特性との関連を調べた. 実験では, Fe3p. Ni3p, P2pの内殻をそれぞれ励起して光電子回折パターンを得た. その際の光電子の運動エネルギーは600evである, Ni_3pとP2pのパターンがFe蒸着前後で変化しなかったことから, バルクの構造は維持されているものと判断した. その際, Fe3pのパターンがNi3pのバターンと非常に似ていたことから, 蒸着さ才たFeはNiサイトに選択的に導入されていることを発見した. また, Fe導入による触媒特性の変化を観察するために, HDS反応の活性に関連のあるNO分子を曝露して反応性の議論を行った. その結果, 清浄なNi_2P表面では全くNO吸着は見られなかったが, Fe蒸着Ni_2P表面ではNOの解離吸着とみられる挙動がXPSにより明らかにされた. また, Fe3p, P2pの内殻スペクトルでそれぞれ高エネルギー側に内殻シフト, 肩構造が見られたことから, NO吸着に活性な構造はNi_2P表面上に形成されたFe_2Pであることが示唆された. 以上のように, 本研究では光電子回折が触媒解析法として有用であることを実証し, さらに, 実際の触媒研究で用いられている表面系に応用することで, 活性構造を明らかにすることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまで行ってきた光電子回折による触媒解析を, 実触媒研究で提案されている表面系に適用して研究を行った. その結果, 他手法では明らかにされていなかった合金表面における挿入原子の置換サイトを明らかにすることに成功した. さらに, 触媒特性と表面構造の関連も調べ, 研究目標としていた内容にまで発展させることが出来た, また, 研究拠点としている大型放射光施設SPring-8において, 特別研究員が研究責任者となり, 課題設定から実験の遂行・報告まで一連の研究運営を行う萌芽課題にも複数件採択された. さらに, SPring-8において顕著な研究業績を上げた者に送られる, 萌芽研究アワードにも選ばれ, 3HにはSPring-8コンファレンス2014において授賞式・受賞講演を行った, このように, 高い外部評価も受けた研究展開ができ, 特別研究員の期待通りの研究が進展したと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで理想表面のキャラクタリゼーションということで単結晶試料を用いた研究を行ってきたが, 実触媒と比較すると, その表面状態及び触媒反応条件は全く異なる. したがって, 単結晶表面で見られる触媒特性が実触媒表面で見られるかは定かでない. そこで, 今後の研究方針としては, 実触媒も視野に置いた研究展開が理想的である, 例えば, 単結晶試料を必要としない分光測定などで, 実反応に近い条件でのin situ測定を可能とする測定装置を構築し, 単結晶と実触媒の両表面で見られる共通の動向を回折で明らかにする, このような, 本研究で開発に成功した分析法をさらに上手く使うことのできる研究展開が望まれる.
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