Project/Area Number |
11J09701
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Environmental dynamic analysis
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牛江 裕行 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2011 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2012: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 炭素循環 / 栄養塩 / 地球システムモデル / 河川 / 氷期-間氷期サイクル |
Research Abstract |
i)陸水域におけるダム湖の存在が陸水炭素循環に与える影響 ダム湖による河川の炭素・栄養塩輸送過程の変化を捉えるために、中国地方を流れる4河川(吉井川、高梁川、小瀬川、厚東川)において、ダム湖と周辺河川水を採取し、炭酸系諸量および栄養塩濃度の測定・比較を行った。ダム湖水と周辺河川水では炭酸系の様相が全く異なり、ダム湖水ではpHの増加・CO2分圧(PCO2)の減少に対応する形で栄養塩濃度の低下が見られた。特に小瀬川では2つのダムを流下するのに伴って顕著に各種栄養塩濃度が低下していく傾向が見られた。ダムは陸水中から栄養塩を減少させ、堆積物として除去するはたらきをしており、陸から海への物質輸送を妨げることが示された。 湖沼やダム湖の多くでは湖水中の光合成により河川水中から炭素・栄養塩が除去されるダムの建設は、下流域の水循環の変化に伴う直接的な影響だけでなく、栄養塩輸送量の減少による間接的な気候影響を持つ可能性がある。 ii)氷期-間氷期サイクルにおける有機物風化による負のフィードバック機構 氷期-間氷期サイクルにおける100m以上もの海水準変動によって、大陸棚を含む陸域から海洋へと大量の有機物が氷期に流入するプロセスが大気CO2に与える影響を、地球システムモデルMESMOを用いた数値実験により評価した。その結果、流入した炭素と栄養塩の海洋での分布の違いを主な要因として、有機物の流入に対して大気CO2が上昇傾向を示すことから、氷期に想定される有機物風化が新たな負のフィードバックプロセスのひとつとして働きうることを指摘した。Broeckerによる陸棚栄養塩仮説では、有機物流入と同時に海底の炭酸塩の溶解による炭酸塩補償作用の応答が極めて強いことが暗に仮定されているために大気CO2を減少させるという結果が得られていたが、地球システムモデルに堆積物モデルを結合し、有機物の流入に対する炭酸塩補償作用の影響を考慮したところ、炭酸塩の溶解によって大気CO2の上昇幅は減少するものの、 Broeckerが指摘したような大気CO2の低下は見られないことが明らかとなった。過去の氷期-間氷期サイクルにおいて、海水準変動に伴う陸棚堆積物に由来する炭素・栄養塩の流入が大気CO2に関するネガティブフィードバックとして機能していた可能性があることが、本研究によって新たに示された。
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