Project/Area Number |
11J10092
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Inorganic chemistry
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 道弘 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2011 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2012: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 分子スイッチ / 銅錯体 / レドックス / 光異性化 / 刺激応答 / 光電子移動 / 反転 / 分子機械 |
Research Abstract |
化学者の究極的な夢の一つは、分子1個の中にいかに面白い機能を盛り込むことができるか、すなわち、電場、光、熱、化学的環境などの外部刺激で構造や物性をスイッチする部位を多く組み込んだインテリジェントな分子を創ることである。私はオリジナルのインテリジェント分子における「銅錯体のピリミジン環反転」を駆使した。一個の銅イオンの周りを有機物が取り囲んで結合した金属錯体においては、金属と配位子の両方の性質を相乗的に組み合わせることにより、簡単な構造でありながら複雑な現象や興味深い物性を引き出すことが可能である。銅に配位できる窒素原子を2個含んだピリミジン環を含んでいるところが鍵で、他の構造は維持したままで反転可能である。つまり分子の組成は同じだが性質が異なる二つの異性体をとる。この銅錯体は一価と二価の間の可逆的な電子移動、酸化還元反応を起こす。また銅一価二価の酸化還元のポテンシャルが異なる。したがって、この四重安定性を操ることで、光や熱、電位の外部刺激に応答するピリミジン環反転によりスイッチでき、同時に光物性や電気化学特性もスイッチできる分子である。環反転の詳細も検討しており、溶媒和イオン対など弱い相互作用で環反転の制御が可能であることや分子内プロセスであることを明らかとした。新規銅一価錯体を合成、同定し、電気化学測定、分光測定、添加実験から、レドックスメディエータを共存させると光電子移動で駆動する反転異性化が起こり、熱で元に戻すことができた。系を化学試薬により部分酸化しても発現できる。よく用いられるフォトクロミック分子は光励起状態における光異性化に伴う色変化が定義だが、今回開発した光異性化は色変化が無く基底状態で異性化する光応答性である。以上から、ピリミジン銅錯体の光誘起反転異性化により光を電気信号に変える機能を持つ分子系の構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は「ピリミジン銅錯体の光誘起反転異性化により、人間の五感から想像される光を電気信号に変える機能を分子で獲得したこと」、を筆頭著者として化学分野で最も代表的な査読付学術雑誌であるJournal of the American Chemical Societyにフルペーパーにて報告した。加えて反転平衡の詳細を米化学会の専門誌にフルペーパーで発表し、銅錯体のピリミジン環反転の最新の成果と学術的意義を総説にまとめた。研究成果を国内外の学会に計4回発表した。これまでの成果と合わせると、筆頭著者の原著論文3報、総説2報、共著4報の計9報と、計19回の学会・シンポジウムにおける発表を行った。以上から当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回開発したピリミジン銅錯体の光誘起反転異性化の化学を発展させるために、置換基効果の分子設計の指針を追究する。この銅錯体は自由度の高い分子設計と機能のチューニングが可能であり、例えば有機物の部位(配位子)に置換基を導入したり、分子構造が異なる配位子を用いることで比較検討を行い今後の分子設計に役立てる。二種類の錯体を混合しても、この銅錯体の骨格は壊れたりせず安定で、ピリミジン環反転は配位子の完全な解離を伴う分子間のプロセスではなく分子内プロセスであることを本年度明らかとし論文に報告しているが、これは分子を素子化しても本機構が適用可能であることを意味している。今回開発した刺激応答性分子は電位変化を引き起こすことができるため、通常の多重安定性に比べ分子の運動を伝導性や電気化学特性の変化として検出しうる分子系である。そのため、一つの分子の化学反応を電気信号で検出する素子の開発を推進すべきである。
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