CD44を介した糖代謝の制御は癌細胞における抗酸化状態と薬剤耐性に寄与する
Project/Area Number |
11J55543
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
腫瘍生物学
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
玉田 真由美 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | CD44 / pyruvate kinase M2(PKM2) / glycolysis / pentose phosphate pathway / glutathione / ROS |
Research Abstract |
我々はp53変異・欠損癌細胞や、低酸素環境下癌細胞といった、より解糖系優位な癌細胞において、CD44発現抑制がグルコース代謝を介したエネルギー産生および細胞増殖を抑制するという結果を得た。そこで、In vitro virus(IVV)法を用い、CD44と相互作用するタンパク質のスクリーニング解析、および、代謝産物を網羅的に解析するメタボローム解析を用いて癌細胞糖代謝におけるCD44の機能的意義を調査した。その結果、CD44が好気性解糖(ワールブルグ効果)の制御因子であるpyruvate kinase M2(PKM2)と結合・相互作用することにより、その活性を抑制し、癌細胞における解糖系亢進を維持していること、逆にCD44の発現抑制は、PKM2活性を上昇させ、解糖系からミトコンドリア呼吸への代謝流動を誘導することを見出した。更に、CD44発現抑制による代謝変調は、Glucose transporterlの発現抑制を誘導し、グルコース取り込みを抑制した。その結果、解糖系の側副路であり、NADPH産生経路であるペントースリン酸経路への流動が抑制され、還元型グルタチオンの減少を引き起こした。還元型グルタチオン濃度の減少は解糖系がより優位に使用されている癌細胞においてレドックスバランスの破綻を誘導し、細胞内活性酸素を上昇させる結果となった。 p53変異・欠損細胞や低酸素環境下に存在するような解糖系優位な癌細胞では、細胞内活性酸素濃度が低く、抗癌剤に抵抗性を示すことが知られている。このような癌細胞においても、CD44発現抑制による代謝変調によって細胞内活性酸素が増加し、抗癌剤感受性を増強させることを見出した。 我々の研究結果は、CD44による糖代謝制御機構がワールブルグ効果の一端を説明し、薬剤耐性を示す解糖系優位な癌細胞や、癌幹細胞において、治療標的となる可能性を示唆していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、CD44発現抑制により解糖系からミトコンドリアへの代謝変調が起きることを確認し、代謝変調の主たる原因がCD44/PKM2 interactionによるPKM2活性抑制であることを明らかにすることができた。CD44発現抑制による細胞内活性酸素の増加が抗癌剤感受性の増強を引き起こすことも明らかにできた。抗癌剤耐性株を作製し、その耐性株では解糖表現型が更に亢進するかについては、現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
CD44がPKM2と結合・相互作用することにより解糖表現型の維持を行うことを報告したが、PKM2の酵素活性に関わるとされる、PKM2チロシンリン酸化をどのような機序でCD44が制御するのかについては、明らかにできていない。Receptor tyrosine kinase、PKM2チロシンリン酸化、CD444との関係を中心に調べていく。また、PKM2チロシンリン酸化のみが、酵素活性の制御機構であるのかについても検討の余地が残っているため、チロシンリン酸化以外に、酵素活性を抑制する機序が存在する可能性についても併せて追及していく。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)