Research Abstract |
平成12年度は,日本海大和海盆から得られた海底堆積物コア(GH92-703)について測定データから沈積流量を換算し,海洋表層生物生産性と有機物質の起源,陸上起源物質の流入,海底の酸化還元環境について,過去3万年間の日本海の海洋環境変動について考察した. 有機物質の起源:最終氷期最寒期付近(2万年前)には厚い暗色層が保存されている.有機炭素沈積流量は,暗色層で高く,3万年前から最終氷期最寒期に向けて増減を繰り返すながら増加し,暗色層の中で2つのピークをもって,その後徐々に減少する.石灰質微生物殻中の無機炭素沈積流量は,有機炭素沈積流量が多いときに増加するが,有機炭素量が増加した後も間欠的に増加する傾向を示す.陸上起源有機物の寄与率を占めす有機炭素・窒素比は,一部の暗色層をのぞき,すべての暗色層で増加する.特に,最終氷期最寒期にむけて,激しい小変動を伴いながら,陸上起源起源有機物供給が多くなる.この時期には,アルミニウムの含有量が他の時期よりも高く,陸上起源物質の流入が多かったことを示唆する. 海底の酸化還元環境は,海洋で生産または陸上から供給された有機物質の保存に影響を与える.有機炭素・硫黄比は,暗色層では3以上で,最終氷期の暗色層では,極端に低くなり,強還元環境となった. まとめ:氷期の中で間欠的に温暖になる時期には,陸上からの物質供給が増加し,密度成層が発達して海底が還元環境になり,暗色層が形成される.最寒期の入り口(海水準が徐々に低下)と出口(海水準が徐々に増加)では,陸上起源砕屑物・有機物が増加するとともに炭酸塩生物生産も増加し,海底は強還元状況になり,暗色層が形成された.最寒期にはいずれの供給も減少し.塊状の暗色層が形成された.融氷期には,間欠的に生物生産,陸上からの有機物供給が増加し,その時期,一時的に海底に還元環境が形成され,暗色層が形成された.
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