Research Abstract |
ゼロエミッション社会を構築するためには,問題解決のための技術革新と並んで,社会システムの変革および一般市民の意識改革が必要不可欠である。本研究では,近年急速に普及し,また機能更新のサイクルが早い携帯電話に着目し,その家庭内動態解析と循環廃棄過程の環境影響を調査した。2000年5月の携帯電話の累計加入数と生産台数から,携帯電話の平均使用年数は1.4年と推算された。また携帯電話にはCu,Pbが高濃度に含まれる他,強い有害性が指摘されるBeや,希少価値の高いAu,Agなどが含まれており,酸性溶液に接触すると,金属類が溶出し,特にPbは埋立判定基準を超えた。このように携帯電話の廃棄は,環境負荷,資源の有効利用の点からも問題があり,製造者が回収・再利用・適正処理を行うことのできるシステムを整えることが必要である。 つづいて,家庭からの廃棄物の約半分を占める生ごみ(厨芥)に着目し,処理・リサイクル方法に関するLCA的検討を行った。標準的な生ごみ1トンに対して,(1)収集-焼却-搬出-埋立,(2)収集-メタン発酵-残渣焼却-搬出-埋立,(3)収集-メタン発酵-残渣堆肥化-搬出-農地還元,(4)収集-堆肥化-搬出-農地還元,の4種類の処理・リサイクルのシナリオを設定し,酸性化,地球温暖化,埋立地消費,有害物質による健康影響の4つの視点でLCAを行った。有害物質にはダイオキシン類と重金属を取り上げ,環境動態モデルである3種のMackayモデルを用いた特性化を行い,参照物質(1,4-ジクロロベンゼン)の大気放出相当量[g-ref]で示した。メタン発酵を含むシナリオでは,地球温暖化,酸性化の影響が小さかった。またダイオキシン類の健康影響は焼却過程を含むシナリオで高かった。重金属類の環境影響は,定常モデルではコンポストの農地還元による影響が大きく,再利用する上で注意が必要であった。
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