Research Abstract |
毛状根は,増殖,生成,蓄積の3つの部位からなる組織体であり,根の先端(生長点)の増殖部位では,細胞分裂が活発に行われ伸長・分枝を繰り返す低年齢の分裂細胞が存在し,生成部位では有用物質の生成が行われる中年齢の細胞からなり,蓄積部位では,有用物質を蓄積した高年齢の成熟細胞からなる.その結果,毛状根全体としては,培養中に増殖および有用物質生成を同時に行うことのできる有望な素材であり,蓄積部位からのみ有用物質を連続回収する培養が有効であると考えられる. 本研究では,毛状根培養中に液胞が発達した有用物質生産部位に対し,ターゲティング能を有する機能性分子を用いた連続破砕システムを開発を目指した.その際,モデル毛状根細胞として,セイヨウアカネ,セイヨウワサビ毛状根を用いた.機能発現として,細胞活性を示す酸素吸収速度分布を,外的ストレスの応答性としては,機械的切断に対する毛状根切片からの発根数の変化として,毛状根内の機能発現に対する位置的分布の解明するとともに,速度論的解釈を行うことができた.さらに,機能発現の位置的分布を迅速に測定するために,蛍光色素を用いたシステムの構築を試みた.得られたシステムにより,種々の毛状根を用い,機能発現の位置的分布を測定し,毛状根間の比較を行った.さらに,機能発現の様子を動的に捉えたデータにより,速度論的解析を行った.また,液胞を染色できる蛍光色素の選択,および,上記で得られた機能発現に対して,分化の程度の指標となる液胞体積に対して相関をもとめた.ここで,細胞内の液胞占有率を指標とし,発根能(発根数,発根時間)を相関付けることができ,毛状根の位置的な増殖能,代謝産物生成能についての基礎的なデータベースの構築を終えた.液胞へのターゲティング能を有する機能性素子の開発としては,FDAの色素が液胞内に選択的に取り込まれることを確認できた.
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