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¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
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Research Abstract |
これまで、代表的な電子供与体であるTTFやDBTTF及びその類似化合物を用いた超伝導性分子錯体の研究は活発に行われているが、全く新しい原理と構造に基づく非TTF系電子供与体の開発は比較的立ち遅れている。ケイ素原子などの14族元素が軌道相互作用によって隣接するπ電子系やヘテロ原子からの電子供与能力を飛躍的に高めるという新しい原理に基づけば、単独では電子供与能の低いπ電子系やヘテロ原子のみを含み、しかも電子供与能の高い分子が設計・合成できると期待される。 まず、分子軌道計算によって1,3-dithioleあるいは1,3-benzodithioleの2位にケイ素原子を導入するとイオン化ポテンシャルが劇的に下がることを明らかにした。この結果を受けて、種々のケイ素置換1,3-benzdithioleとその類縁体の合成を行い、その電子供与能力を酸化電位により評価した。1,3-Benzodithioleに対してケイ素原子を1つ導入すると約0.3Vの酸化電位の低下がみられた。また、ケイ素原子を2つ導入すると約0.4Vの酸化電位の低下がみられた。 次に、1,3-benzodithiole,thioanisole,1,3-dithianeのスズ置換誘導体を合成し酸化電位を測定した。スズ原子の導入はケイ素原子よりもはるかに酸化電位を低下させることが明らかとなった。これは、炭素-スズσ軌道の方が炭素-ケイ素σ軌道よりも1,3-benzdithioleの2つの硫黄原子のp軌道と強く相互作用することを意味している。 以上、本研究によって、電子移動におけるケイ素やスズなどの14族元素のβ効果に基づいた新しい電子供与体の可能性が示された。炭素-14族元素σ軌道と隣接するヘテロ原子のp軌道との軌道相互作用が電子供与能力の向上には非常に重要であることが明らかになった。
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