Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2000: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
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Research Abstract |
F_1モーターの回転機構を解明するために以下の研究を行った. 昨年度,結晶構造から,残基番号181のGly残基がヌクレオチドの有無によって大きく二面角を変化させる事を発見し,これをAlaに変異させると,F_1-ATPaseに特徴的なADP・Mgによる阻害状態に陥りにくくなることを発見した.このADP・Mgによる特異的阻害状態は,F_1モーターの回転機構を解析する上で大きな障害となる.そこで,この変異と165番目のThrをSerに置換する変異を同時に導入して,阻害を受けにくい変異体を作成した.更に,ヌクレオチド結合を容易に観察するために触媒部位付近にTrpを導入した.これらの変異を導入したF_1モーターは,狙い通り,きわめてADP・Mgによる阻害を受けにくくなり,1mMのADP共存下でも容易に回転の一分子観察を行うことができた.このことは,従来不可能であったATPの加水分解の自由エネルギーを広い範囲で制御した条件下での回転観察が可能になったことを意味する.この変異体を用いて,一分子が一動作で行う力学的仕事と統計的性質を持つ入力の自由エネルギーの関係を明らかにしてゆく予定である.またストップトフローを用いた予備的な実験で,ATPの結合のキネティクスを追跡できることを確認している. 次に生体分子によるエネルギー変換について理解するために,二つの反応が双方向的・可逆的に共役するモデルを考案し,計算機シミュレーションによってその振る舞いを検討した.その結果,簡単な仮定に基づき,入力・出力の反応の起こる回数の比が非整数で可変と言う性質の得られるモデルができた.これが実際の蛋白質によるエネルギー変換機構とどのような関わりを持つかについても今後考察を深めて行きたい.
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