ミナハサ、トンバトウにおけるトンサワン語の言語調査と記述
Project/Area Number |
12039235
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Humanities and Social Sciences
|
Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
平林 輝雄 長崎県立大学, 経済学部・一般教育科, 助教授 (40270342)
|
Project Period (FY) |
2000
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2000)
|
Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
|
Keywords | ミナハサ / スラウェシ / トンサワン語 / 危機言語 / コード混用 / 社会言語学 / 言語使用領域 / 言語調査 |
Research Abstract |
北スラウェシ州、ミナハサ地方では、それぞれの土地の言語とインドネシア語に加えて、メナド・マレー語がリンガ・フランカとして民族間の意思伝達に用いられる。トンバトウ郡においても3つの言語変種が併用されるポリグロッシャの状態であるが、母語であるトンサワン語が日常生活においていまだに常用され、また言語の純粋性が保たれている。ただし、トンサワン語に代わってメナド・マレー語を常用する若い世代が増え、地方語であるトンサワン語の衰退が徐々に進んでいる。 今回の調査ではトンバトウ郡内2ヶ所の村落、すなはちカリ村および山間の村落トンサワン村においてトンサワン語使用の実態を調べた。「家族」、「職場」、「交わり」、「公の場」、「感情」、「精神思考」、「売り買い」等のそれぞれの領域における下位領域を複数設定して、カリ村住民187人およびトンサワン村住民248人に個別面接を行ない、選択されるコードを調べた。 カリ村ではトンサワン語をもっとも得意と答えた住民は全体の62%におよんだ。若年層では37%、高年層では2.4倍の88%にも及ぶ。ただし若年層ではメナド・マレー語をもっとも得意と答えた被験者のほうが多く、49%に及んだ。トンサワン語が多用される下位領域は「祖父母」、「父母」、「きょうだい」で、60〜69%に及んだ。またトンサワン語とメナド・マレー語の混用もよく用いられ、「こども」では47%に及び、特に若年層において顕著である。混用によりトンサワン語の純粋性がおかされつつある。 山間の村落トンサワン村では、トンサワン語をもっとも得意と答えた住民は全体の69%におよんだ。若年層でも61%にもおよぶ。トンサワン語の使用がより優位な状態にある。これに続くのがメナド・マレー語で22%の住民がこのコードをもっとも得意と答えた。メナド・マレー語の使用は「見知らぬ人」、「儀式の主宰者」、「執務中」、「なだめる」、「祈る」、「数を数える」および「売り買い」など、部外者との接触、儀式、公、精神・思考、売り買いなどにかかわる下位領域で顕著に確認された。 音韻論、形態論および統語論記述のために言語データを集めた。音素の特定をほぼ完了し、形態論についてはおおまかな分析を行なった。トンサワン語の語構成は非常に複雑であり、緻密な分析・記述のためにはさらに多くの言語データを集めることが必要である。 また、トンサワン語辞書の編纂のために、研究協力者の協力を得て基礎語彙を約3,750語確保し、説話テキスト集より約3,000語を採集した。
|
Report
(1 results)
Research Products
(1 results)