Budget Amount *help |
¥3,600,000 (Direct Cost: ¥3,600,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
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Research Abstract |
液体・タンパク質・共役π電子系といった,多くの振動自由度をもつ分子系の振動ダイナミクスを,スペクトロスコピーの立場から論ずるためには,光との相互作用に関わる遷移強度の大きな振動モードの性質を知ることが重要である。これらの系の,振動遷移強度が大きいモードの多くに共通した性質として,空間的な非局在性を挙げることができる。本研究では,そのような非局在振動励起と他自由度の相互作用に由来する現象として,溶液内分子の振動分極を取り上げた。 極性溶液中の分子は,多かれ少なかれ,分子間静電相互作用による影響を受ける。電子の運動による分極のほか,分子構造の歪みによる分極(振動分極)もある程度起こる。最近,溶液内分子の構造変形の効果が振動スペクトルに明確に見られる例が,幾つか報告されている。分子の振動分極率は,振動に関わる双極子微分の2乗に比例するため,赤外強度が大きい振動モードが,分子間静電相互作用による影響も受けやすいことになる。筆者が考案したintensity-carrying mode(ICM)理論により,大きな双極子微分を生ずる分子内振動の特徴と電子構造の関係が明らかにできる。 もう1つ重要な振動運動として考えられるのが,溶質分子に働く外部電場を変化させる分子間振動である。Instantaneous normal mode(INM)の描像では,溶質分子に働く外部電場を分子間振動座標で微分した量が大きい分子間振動ということになる。問題となるのは,分子間振動モードの数は一般に極めて多く,1つ1つの特徴を吟味することが事実上不可能である,ということである。そこで,分子間振動ノーマルモードの線形結合として,溶質分子に働く外部電場の変化に重要な,比較的少数自由度の分子間振動を抽出できるような理論的手法を,INM理論とICM理論に基づいて導いた。
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