Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
径路積分セントロイド分子動力学(CMD)法を用いれば、一定の熱力学条件下での多原子・分子系の実時間相関関数を近似的に計算できることはよく知られている。新たにCMD法をボーズおよびフェルミ統計に拡張することを試みている。さらに従来型のボルツマン統計に従うCMDシミュレーションを広汎に適用する研究も行っている。本年度は以下の成果が出た。(A)研究代表者は液体パラ水素に対して定温・定圧のCMD計算を行ってきたが、今年度は液体オルト重水素の定温・定圧CMD計算を行い、その集団励起・集団運動を調べた。特に動的構造因子や非干渉性中間散乱関数を計算し、その特徴が古典極限でのMDの結果、あるいは昨年度までに行ってきた液体パラ水素の結果に比べてどのように異なるかを検討した。その結果、液体オルト重水素の集団励起は液体パラ水素に比べて減衰が強く、より古典極限での状況に近いことがわかった。重水素の質量が系水素より大きいことによるこの集団励起の差異は、液体水素における同位体効果・量子効果を表している。(B)また、本年度は液体パラ水素と液体オルト重水素に対して、CMD計算で得られたセントロイドトラジェクトリーを基に、Green-Kubo公式のセントロイド近似を仮定した上で各種の輸送係数(熱伝導率、ずり粘性係数、体積粘性係数)の計算を行った。その結果、古典極限では実験値とオーダー自体もかなり違っていたが、CMD計算では劇的に正確さが上がることがわかった。(C)液体パラ水素に対して40barまでの高圧条件でCMDを行い、そのような高圧下での集団励起の様相をObarの場合と比較した。その結果、高圧条件では集団励起のエネルギーはやや上昇することがわかった。(D)CMDのボーズ・フェルミ統計への拡張について置換の効果を記述する擬ポテンシャルの形式について検討した。
All Other
All Publications (7 results)