昆虫機械受容系の熱雑音感受性と中枢における微弱信号抽出機構
Project/Area Number |
12048202
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Biological Sciences
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
下澤 楯夫 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (10091464)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青沼 仁志 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (20333643)
西野 浩史 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (80332477)
馬場 欣哉 富山大学, 工学部, 講師 (30238232)
|
Project Period (FY) |
2000 – 2001
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2001)
|
Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥6,500,000)
Fiscal Year 2001: ¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 2000: ¥4,200,000 (Direct Cost: ¥4,200,000)
|
Keywords | 機械感覚細胞 / 介在神経 / 昆虫 / 熱雑音 / 情報機械 / 情報伝送量 / エネルギー感度 / 閾値 / 確率共鳴 / 情報伝送速度 / 内部雑音 |
Research Abstract |
昆虫の機械受容器は、常温の熱揺動エネルギーk_BT(約4×10^<-21>J、可視光フォトンのエネルギーの1/100)をも検出できる最高度に進化した刺激受容系である。コオロギ気流感覚細胞が熱雑音(ブラウン運動)に揺すられて発火するほど高感度なこと、中枢の介在神経は熱雑音の無相関性を利用して閾値以下の微弱な信号を抽出することを明らかにする目的で本プロジェクトを遂行した。フォトンのような量子を持たない機械受容器、化学受容器、イオンチャンネル、シナプス受容体などは必然的に熱雑音に出会うから、雑音揺らぎやシナプス加重機構が神経系一般に広くみられることなど、情報機械としての神経系が究極の乱数発生器としての熱雑音を利用する設計原理の解明につながる。 コオロギを実験材料に、気流感覚器の機械的構造と感覚細胞のエネルギー変換応答とを分離し、分子熱雑音限界までエネルギー感度を進化させた機械感覚細胞の刺激受容機構解明の手がかりを得、情報機械としての感覚細胞の性質を解明するため感覚細胞が運ぶ情報、感覚細胞が介在神経に伝える情報量の定量化を試みた。中枢の介在神経から記録をとり、閾値付近の気流刺激への応答から、感覚細胞から介在神経への情報伝送量を測定した。コオロギの気流感覚細胞が運ぶ情報量はスパイク1つ当たり2〜4bit。入力感覚繊維1本あたりの情報量はおよそ300bits/secであることを示した。また、中枢の気流感覚介在神経の樹状突起部から細胞内記録をとり、閾値付近の人口白色雑音波形を繰り返し与え、後シナプス集合電位の変動分から、気流から介在神経までの情報伝送量(bits/sec)を測定した結果、50〜200bits/sec程度とばらつきはあるが1個の感覚細胞が伝える情報量より遥かに小さいことがわかった。昆虫の機械受容器は究極感度まで進化し熱雑音に直面している、逆説的に熱雑音のエネルギーと無相関性を利用してさらに微弱な信号を検出する中枢機構が進化したことが示唆された。
|
Report
(2 results)
Research Products
(10 results)