ニューロプシン遺伝子欠損マウスの海馬神経回路の検討
Project/Area Number |
12053253
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Biological Sciences
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
塩坂 貞夫 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (90127233)
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Project Period (FY) |
2000
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2000)
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Budget Amount *help |
¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
Fiscal Year 2000: ¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
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Keywords | ニューロプシン / L1 / シナプス間隙 / 細胞外マトリックス / 細胞接着因子 / 海馬 / 大脳辺縁系 / カリクレイン |
Research Abstract |
ニューロプシンは1995年にわれわれが世界に先駆けて見出したセリンプロテアーゼであり、現在では類似蛋白質のクローニングによってカリクレイン型プロテアーゼファミリーとして総称される。 ニューロプシンはキンドリング形成過程でおこる異常なシナプス強化や、長期増強(LTP)でおこるシナプス強化に関連しているとおもわれる。生化学的な解析により、ニューロプシンは細胞外に分泌され、シナプスおよびその近傍の細胞接着因子に作用し、そのプロテアーゼ活性によって生理作用を引き起こすと考えられた。培養海馬細胞を用いた実験ではニューロプシンを添加することによって細胞同士が互いに接着し、数個から数十個の細胞がクラスターを形成し、その突起は添加しないものに比べ束形成をするようになる。細胞外マトリックスタンパク質の中でL1をもっとも効率よく特異的に部分分解し、現在のところニューロプシンのもっともよい基質である。組織型プラスミノーゲンアクテイベータの脳内基質として注目されているラミニンには全く影響せず、ニューロプシンとtPAは基質特異性が大きく異なる。これらがLTPにおいてシナプス接着の強化とその解離に関っているかまた、関っているとすればどのように関っているかについてはまだ明らかでない。ニューロプシンを海馬スライス標本に添加し、テタヌス刺激を行うと,LTPがさらに拡大し、その大きさはニューロプシンの用量依存的であった。LTPの変化に対するニューロプシンの特異的作用とその作用がL1特異的であることから、これがシナプスの可塑性変化において接着因子の性状を大きく変化させ、シナプス接着の物理変化を誘導することが仮定された。 ニューロプシン欠損マウスでは海馬の形態のマクロ的観察では変化が見られず,電子顕微鏡を用いた定量的解析により,非対称性シナプス数の減少がみられた。しかし、シナプスそのものの形状に変化はみられず、このことはニューロプシンを欠くマウスではシナプス接着が形成されにくいことを示した。本研究において、基質として考えられるL1の光学的、電顕的免疫組織化学を行ったところ、これまで見出されていなかったL1のシナプスへの局在、ニューロプシン欠損マウスでのL1の蓄積、しかしながらL1を含有する神経終末の接着減少が観察され、欠損マウスでのシナプス数の減少という結果とよく一致した。欠損マウスで神経可塑性のような急性変化においてシナプス構造がどうなるかはまだ不明であるが、今回の研究により、細胞外接着機構においてシナプス間隙におけるニューロプシンとL1の相互作用により接着の制御が行われることを強く示唆した。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)