Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
動脈硬化の原因となるオレイン酸コレステリルを分解・除去する方法として、赤外自由電子レーザー(FEL)を用いたレーザー治療法が提案されている。これにより分子構造変化が誘起される領域を特定することは臨床応用上重要であるが、ミクロ領域における分子構造変化を報告した例はない。そこで、試作した赤外近接場顕微分光装置を用いて、オレイン酸コレステリルを赤外自由電子レーザーによりオレイン酸とコレステロールに分解した領域の近接場観察を試みた。具体的には、赤外顕微鏡を用いて赤外自由電子レーザーのパルス光(λ=5.75μm、5μJ(試料面上))をオレイン酸コレステリルフィルム(膜厚2μm)に照射し、照射領域を差周波発生(DFG)による赤外パルス光(λ=5.75μm、0.1nJ(試料面上))と開口径2μmのカンチレバーを用いた近接場赤外顕微鏡で観察した。非照射領域はエステル結合による赤外光の吸収が観察される一方、照射領域は吸収量が少ないことを示し、この結果からFEL光照射領域内ではエステル結合が切断され、オレイン酸コレステリルが分解していることを回折限界以下の空間分解能で確認することができた。また非照射領域との吸収光量を比較することでFEL光照射領域の表面下1μmまで分子構造変化が起こっていることを確かめた。また、チップ増強ラマン散乱分光に非線形光学効果を取り入れることで、近接場フォトンの閉じ込め効果を高め、空間分解能の向上を図った。具体的にはアンチストークスラマン散乱を金属チップ先端によりナノスケールで誘起した。DNAネットワーク構造を観察した結果、15nmの空間分解能を達成することができた。
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