Research Abstract |
ヌタウナギとヤツメウナギによって代表される無顎類は,系統発生上,脊椎動物に最も近い無脊椎動物である原索動物とヒトが属する有顎脊椎動物の中間に位置している.近年,われわれを含めた複数の研究グループにより,原索動物と無顎類の中間段階,および無顎類と有顎脊椎動物の中間段階で各1回のゲノム重複がおこった可能性が高いことが提唱されている.もし,この仮説が正しければ,グノム重複による遺伝子数の飛躍的な増加が原索動物から有顎脊椎動物への進化において,きわめて重要な役割を果たした可能性がある.本研究では,ヌタウナギcDNAクローンをランダムにシークエンシングすることにより,ゲノム重複仮説の妥当性を検証するとともに,系統発生上枢要な位置を占めているにもかかわらず,これまで十分に顧みられることのなかった無顎類から配列データを収集することを目的とした. (結果) メクラウナギの血球由来cDNAクローンをランダムに1000個シークエンスした.これらのクローンのうちで,有顎脊椎動物において複数のパラロガスコピーを有する遺伝子につき,分子系統解析をおこなった.さまざまな生物種からの配列情報が入手可能であり,分子系統解析が有用と考えられたのは,HMG(high mobility group)protein,SOS(son of sevenless),enolase,aldolaseなどの遺伝子群であった.これらの遺伝子群のいずれにおいても,メクラウナギ由来の配列は有顎脊椎動物の特定のパラログとオーソロガスな関係を示さなかった.以上の結果は,少なくとも1回のゲノム重複が無顎類と有顎脊椎動物の中間段階で起こった可能性を支持する.
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