Research Abstract |
<背景と目的>オオムギのゲノムサイズは約5,000Mbpと極めて大きいので,cDNA配列を用いたESTプロジェクトはゲノム解析を進める上で効率的な手法である.1999年末までにNCBIのESTデータベース上にオオムギのシーケンスはわずか80件しかなかった.しかし,複数のオオムギESTプロジェクトが精力的に解析を進めた結果.2001年1月現在で約7万件のオオムギESTがNCBIに登録されている.現在,米国(60,000シーケンス解析済み),ドイツ(同13,000)フィンランド(9,000),英国(3,000)などで解析が進んでいる. <検討結果>材料には醸造用オオムギ「はるな二条」(発芽時の芽,幼苗の葉身,止葉期の上位3葉),「赤神力」(栄養成長期の葉身)および野生オオムギH.spontaneum(OUH602)(止葉期の上位3葉)を使用し,cDNAライブラリーをそれぞれ作成した.シーケンス解析は国立遺伝学研究所のシーケンシングセンターで行った.シーケンシングは各クローン3′および5′の両端から行い.2001年1月末現在で約43,000シーケンスの解析を終了している. <考察>現在,我々を含めた各国のESTプロジェクトはデータを共有するコンソシアムを形成し,Unigene化したデータと直ちに利用可能なDNAサンプルを共同開発する方向で合意している.また,ESTデータベースについても,いくつかのプロジェクトで我々とデータを共有する予定である.イネのESTとの相同性を検索し,シンテニーを利用してオオムギのESTをマップ上に配列する仮想ESTマップは,イネのマップと遺伝子の情報が効率的に利用できるので,オオムギのESTを利用する上で極めて有用である.さらに,現在,ESTの大規模STS化や,そのPCR産物のシーケンスを系統間で比較して検出するSNP情報など,遺伝子配列に基づいた効率的なゲノム研究手法を開発中である.
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