平滑なガラス表面に金を真空蒸着した基板上に、末端にSH基を導入したC11のアルキル鎖とPEGからなる自己組織化膜を貼り付けた。PEG末端のOH基で覆われた基板表面は、デキストランコートを施したものよりも非特異的吸着が低いことが報告されており、単分子膜の構成成分を短鎖(エチレングリコール3単位(EG=3))と長鎖(EG=6)の両方で構成し、長鎖のみを各種官能基で活性化した。立体障害を避けるように2:98の比率で比率で混合した長鎖と不活性な短鎖(末端はOH基)からなる混合自己組織化膜を金表面上に形成させた。基板表面は一定の密度で官能基がすべて同じ方向を向いているので、高い確率で特異的に相互作用するものを補足することが期待される。本年度では上記のモデルシステムとしてPI3KのSH3ドメインとリガンドペプチドを選び、リガンドペプチドを固定したもの、長鎖の末端をNH2基で修飾したもの、末端がOH基のみのもの、そして無修飾の金チップの4種を用意し、PI3K-SH3ドメインの溶液をのせてインキュベーションし、水で一回のピペッティングで洗浄と脱塩を同時に行い、MALDI/TOF-MS型質量分析計でイオン化したところリガンドペプチドチップに強いPI3K-SH3ドメインのイオンピークが観測された。他にOHチップに僅かにイオンピークが観測されるのみであった。また一回のスクリーニングに消費したタンパク質は25μMの濃度で2μLすなわち50pmolで可能であることも示している。実際はその9割以上を回収できたので実質的な消費量はそれ以下である。
|