躁うつ病とりわけ双極性障害に関しては遺伝要因の関与が強く示唆されてきたが、現在有力な候補領域とされているのは、18番染色体の動原体周辺部と21番染色体の長腕21q22のみである。本研究では我々が国際協力により決定した21番染色体のゲノム塩基配列を基盤として21q22にマップされた双極性障害型躁うつ病の疾患感受性遺伝子を解明することを目的として、以下の研究を行った。 1.候補領域内のいかなる遺伝子も取り逃がすことのないよう21q22に残された3ヶ所計100kbのクローンギャップの解消を試み、新たに単離したクローン、PCRを用いて約40kbを埋めることに成功した。 2.躁うつ病候補遺伝子の系統的単離:21q22のゲノムシーケンスの解析から推定された遺伝子についてcDNAの単離を進め、DNAメチルトランスフェラーゼ3類似遺伝子DNMT3L、DSCR5、DSCR6、WDリピート蛋白WDR4、グリセロール3リン酸透過酵素と推定されるSLC37A1/G3PP、膜貫通型セリンプロテアーゼTMPRSS3、UBAドメインとSH3ドメインを持つUBASH3A、ウロモジュリン類似蛋白UMODL1、マウユ精巣特異的遺伝子Tsga2のヒト型遺伝子TSGA2、Znフィンガー蛋白ZNF295、C21orf25、アンキリンリピートを持つキナーゼANKRD3など多数の新規候補遺伝子の構造を決定した。また既知・新規遺伝子のコーディング領域を増幅するプライマーを作成し、PCRの条件を設定した。 3.躁うつ病家系01001について、新規カルシウムチャンネル蛋白TRPC7の遺伝子における多型の有無をSSCPによって解析した(Baronら、神庭らとの共同研究による)。 候補遺伝子の探索は順調に進んだ。既に、領域内の大部分の遺伝子について完全な遺伝子構造が決定できた。今後は候補遺伝子の多型解析を重点的に進める。
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