Research Abstract |
精神分裂病は一般人口のおよそ1%に発症し、青年期に発病して進行性/再発性の経過をたどる。精神分裂病の病因は未だに不明であるが、家系研究、養子研究、双生児研究などの臨床遺伝学的知見から遺伝的要因が関与していることは明らかである。そのため、近年、分子遺伝学的方法を用いた病因解明が活発に行われている。われわれは、胎生期を含めた人生早期の神経発達の障害が精神分裂病をもたらすという仮説(神経発達障害仮説)に基づいて候補遺伝子を選び、精神分裂病の発病危険性との関連を検討している。 最近、精神分裂病の死後脳において前頭前野、頭頂皮質、海馬、尾状核、小脳におけるreelinのmRNAと蛋白量が健常対照群に比べ減少していることが報告された^<1)>。そこで、reelinタンパクやそのシグナルカスケードに関わる受容体(CNR,ApoE-R2,VLDL-R)や関連したタンパク(Fyn,mDab-1)をコードしている遺伝子の変異が精神分裂病の神経発達障害の原因となり、発病危険性と関連する可能性が指摘されている。われわれは、これらの遺伝子のうち、reelin遺伝子の3塩基繰り返し配列多型、とvldl-r遺伝子の3塩基繰り返し配列多型に注目し、精神分裂病とコントロール群との間で遺伝子型分布・対立遺伝子頻度について比較した。 患者群、コントロール群ともに文書でインフォームド・コンセントを得て採血し、ゲノムDNAを抽出した。3塩基繰り返し配列に関しては、多型部位をPCRで増幅し、ABIPRISM Genetic Analyzer(Applied Biosystems)のGene Scanを用いて遺伝子型を決定した。その結果、vldl-rおよびReelin遺伝子いずれも遺伝子型分布、対立遺伝子頻度ともに患者群とコントロール群との間に統計的有意差を認めなかった。
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