Research Abstract |
背景と目的:動脈硬化症は高血圧、虚血性心疾患、脳血管障害の原因となることが知られており、多因子疾患であると考えられている。しかしながら、実際に多因子疾患の関連遺伝子を同定することはしばしば困難なことも多い。そこで我々は、動脈硬化症の基礎疾患となる高脂血症に注目した。すでに原因変異が証明されているアメリカユタ州の高脂血症一大家系を用い,高脂血症関連遺伝子や脂質代謝関連遺伝子の一塩基多型(SNPs)と血清脂質値との間で相関解析を行うことにより、高脂血症の増悪因子と考えられる関連遺伝子を明らかにする。また、血管の収縮、拡張に直接関与すると思われる遺伝子のSNP検索を行い虚血性心疾患との関連解析を行う。 検討結果:高脂血症一大家系のなかでLDL受容体に変異をもつ79名の患者を対象に、高脂血症関連遺伝子、脂質代謝関連遺伝子など46候補遺伝子のSNPsを検討する。SNPsのタイピングは、NCBI,HGBASEなどデータベースに報告されているものや、文献で報告されているアリル頻度の比較的高いものを選び、ダイレクトシーケンス法およびSNaP shot法にてを行った。なかでもアミノ酸置換を伴うcoding領域のSNPやプロモーター領域のSNPを中心に、血清脂質値との間で相関解析を行った。現在までの解析では、Apo H、Apo A2、HTGL、LCATにおいて、SNPsと血清脂質値の間で相関が認められた。これらの遺伝子が、高脂血症を増悪させる修飾因子となっている可能性がある。SNP検索においては血管拡張に関与するCRLR遺伝子に日本人において8箇所新規SNPを同定した。 考察:今後、有意差の認められた4つの遺伝子につき同家系内の変異をもたない患者において年齢と性別を厳密にあわせ関連解析を行う。これによりLDL受容体変異の相乗効果により高脂血症を増悪させているのか、あるいは変異に関係なく単独で高脂血症を増悪させうる因子なのかが推測できる。日本人で同定した血管の収縮、拡張因子のSNP検索と虚血性心疾患との関連解析も継続していく。
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