研究代表者(安田)はH11年度に(株)日立製作所より現職に転出して、新たに研究室を立ち上げ、H12年度「ゲノム生物学」の上記予算配分を利用することで、本提案にもある上記研究を開始した。本研究は以下に述べる3つのステージからなると考えている。すなわち、1)細胞を1細胞単位で隔離し連続培養観察できる装置系の開発、2)隔離した1細胞のDNA・mRNAを回収・分析して遺伝子多型解析・mRNA発現定量解析技術の開発、3)実際にモデル細胞(大腸菌を検討)を用いた細胞機能と遺伝子多型、mRNA発現量との関係の計測である。 H12年度は、上記1)の「1細胞連続培養観察装置系」を開発した。装置は、スライドガラスに径30ミクロン程度の穴をマイクロ加工技術で掘り、この中に大腸菌を1匹閉じ込めた後、半透膜で上面をシール(ガラスと半透膜とはビオチン・アビジン結合で接着)したもので、さらにこの半透膜の上に培養液還流槽を設けることで、一定の培養溶液条件下での1細胞の活動を連続で顕微鏡観察できるものである。さらに光ピンセットと組み合わせることで特定の細胞を選択することも可能である。実際、本装置を用いることで、大腸菌1細胞の成長(伸長)速度、分裂周期を測定したり、細胞数を増やして相互衝突することが成長・細胞分裂にどのような影響をもたらすか、単離した1細胞が分裂してできた子細胞と親細胞との成長速度・分裂周期の違いなど従来の測定では計測できなかった1細胞の振る舞いを測定し、同一の遺伝子を持つ細胞相互の機能の違い等も測定できるようになった(論文2報投稿中)。
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