Research Abstract |
遺伝情報規則の抽出・発見に関して,既に従来のAIをベースとした様々なアプローチが試みられている.このような背景の中で本研究の目的は,パターン認識の考え方に基づく規則の抽出・発見(推論)を行う新たな規則推論手法(抽出・発見)を提案し,その有効性を示すことである.さらに,提案手法の高速化を目的としたハードウェアを提案し,その有効性を示すことである. この目的に対して本研究では,パターン認識手法の一つであるカーネルベース法を記号列に発展させた記号カーネルベース法(カーネルと呼ばれる規則の要素を"重ね合わせる"ことで全体の規則を形成する手法)を提案した.提案手法を困難な記号推論問題の一つとされている英単語の発音記号推論に適用し,その基本的有効性を確認した.さらに,ヒト遺伝子のイントロンとエクソン境界(スプライス部位)の高次規則推論に適用し,微弱な規則の抽出実験を行った.この結果,11,000個の事例(GT境界とその近傍)に対して92%以上の認識精度を得ることができた.また,専用ハードウェアである進化ハードウェアシステムの回路設計が終了し,1μ秒以下の処理速度で1つの記号列に対する認識処理ができる見通しを得た. 本提案手法(記号カーネルベース法)は,記号列の認識とその規則推論に有効であることがわかった.しかしながら,対象とした問題(スプライス部位の認識と推論)は有効な既存手法が多く,本手法の有意性がまだ示せていない.本手法によってはじめて高い認識精度と規則の抽出が可能となる対象問題を探索し,具体的評価をする必要がある.さらに,設計が完了したハードウェアの有効性,有意性を示すことができる対象問題の探索も不可欠である.
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