Research Abstract |
神経回路形成において、神経成長円錐でのアクチン細胞骨格の再構築が中心的な役割を果たしているが、その制御機構は不明である。私達は、発生過程の脳神経系に高発現する新規なプロテインキナーゼ、LIMキナーゼ(LIMK)を同定し、これがRac,Rho→LIMK→コフィリンというシグナル経路を経て、アクチン骨格の再構築を制御していることを明らかにした。本研究では、神経突起の伸展・退縮過程におけるLIMKシグナル経路の役割を解明することを目的として、以下の成果を得た。 1.神経芽細胞腫N1E-115細胞における血清、LPAや活性型Rhoによる神経突起の退縮過程において、LIMKの活性化とコフィリンのリン酸化が誘導され、突起の退縮に関与していることを明らかにした。また、小脳顆粒細胞において活性型ROCKによる軸索形成の減少がLIMキナーゼのドミナントネガティブ体の発現により阻害されることを明らかにし、LIMKがRhoの下流因子として神経突起の退縮経路に関与していることを示した(京大、尾藤らとの共同研究)。 2.セマフォリンによる脊髄後根神経節細胞の神経突起退縮過程において、LIMKによるコフィリンのリン酸化経路が重要な役割を果たしていることを明らかにした(臨床研、藍沢らとの共同研究)。 3.ショウジョウバエのLIMK遺伝子を同定し、ヒトLIMKと同様に、コフィリンをリン酸化し、アクチン骨格の再構築を誘導することを明らかにした。 4.トリ脊髄後根神経節神経細胞にGFP-LIMKおよびGFP-アクチンをヘルペスウイルスベクターを用いて導入し、LIMKが成長円錐の運動性に関与していることを示した。
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